
賃貸物件を退去する際、「預けた敷金はきちんと返ってくるのだろうか」と不安に思う方は少なくありません。敷金が返ってこないのは普通のことなのか、もし返金されなかったらどうすればよいのか、疑問は尽きないことでしょう。
この記事では、そもそも敷金とは返ってくるお金なのかという基本的な仕組みから、返金されない主な理由を解説します。例えば、原状回復費用が差し引かれたり、ハウスクリーニング代が請求されたりするケース、また契約書に特約があった場合や、家賃滞納・修繕費の未払いが影響する状況など、様々な要因が考えられます。
さらに、敷金が返ってこないのは違法なのかという疑問にもお答えします。万が一、不当に敷金が返還されない場合に、敷金を取り戻すための具体的な対処法も紹介します。管理会社や大家への交渉方法のポイント、その際に重要な証拠書類の準備と冷静な対応の必要性、そして最終的な手段である少額訴訟や専門機関への相談に至るまで、よくある質問にも触れながら、敷金に関するあらゆる悩みを解決へ導きます。
この記事でわかること
- 敷金が返ってこない主な理由と、それが普通なのかという実態
- 原状回復で借主が負担すべき費用と貸主負担の範囲
- 納得できない場合に敷金を取り戻すための具体的な交渉手順
- 内容証明や少額訴訟など、法的な対処法とその活用方法
敷金が返ってこないのはなぜ?普通のケースをわかりやすく解説
- 敷金が返ってこないのは普通?返金されない理由と対処法を解説
- 敷金とは?そもそも返ってくるお金なのか
- 原状回復費用が差し引かれた場合の注意点
- ハウスクリーニング代が敷金から引かれることも
- 契約書に特約があった場合は内容を確認
- 家賃滞納・修繕費の未払いが原因になるケース
敷金が返ってこないのは普通?返金されない理由と対処法を解説
退去時に敷金が1円も返ってこないと、「敷金が返ってこないのは普通のことなのか」と疑問に思うかもしれません。
結論から言うと、敷金が全く返還されないのは「普通」ではありませんが、残念ながら珍しいケースでもないのが実情です。ある調査によると、東京都の賃貸住宅の退去者のうち、何らかの形で敷金が返還された人は約7割にのぼります。一方で、約3割の人は1円も返還されなかったと回答しています。
敷金の返還状況 | 割合 |
全額返ってきた | 12% |
5割~10割未満 | 41% |
5割未満 | 16% |
なし(返ってこなかった) | 31% |
このように、多くのケースで何らかの費用が差し引かれ、全額返還されることは少ないのが現実です。しかし、大多数の人は一部であっても返金を受けています。したがって、「敷金は返ってこないのが当たり前」と考えるのは早計です。
なぜ敷金が返ってこない、あるいは減額される事態が起こるのでしょうか。その背景には、後述する「原状回復費用」や「ハウスクリーニング代」、そして「契約書の特約」などが大きく関わっています。これらの仕組みを正しく理解し、ご自身のケースが正当なものかを見極めることが大切になります。
敷金とは?そもそも返ってくるお金なのか

敷金が返ってくるかどうかを考える前に、まず「敷金」の基本的な性質を理解しておく必要があります。
敷金とは、賃貸借契約を結ぶ際に、入居者が大家さん(賃貸人)に対して預けるお金のことです。これは、家賃の滞納や、入居者が部屋に損害を与えてしまった場合の修繕費など、契約中に発生する可能性のある入居者の債務を担保する目的があります。あくまで「預け金(デポジット)」としての性質を持つため、礼金のように大家さんへのお礼として支払うお金とは異なり、原則として退去時に返還されるべきものです。
民法第622条の2においても、敷金は「賃料その他の賃貸借契約上の債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されています。そして、賃貸借契約が終了し、物件の明け渡しが完了したとき、預かった敷金の額から未払いの家賃や原状回復費用などを差し引いた残額を、大家さんは入居者に返還する義務を負います。
もし家賃の滞納がなく、お部屋の使い方にも特に問題がなければ、敷金から差し引かれる費用は発生せず、全額が返還されることになります。つまり、「敷金は原則として返ってくるお金」というのが法律上の基本的な考え方です。
原状回復費用が差し引かれた場合の注意点
敷金が返還されない最も一般的な理由が、「原状回復費用」が差し引かれるケースです。
「原状回復」と聞くと、部屋を借りた時と全く同じ、新品の状態に戻さなければならないと誤解されがちですが、法律上の意味は異なります。国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。(参考:国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン)
貸主負担と借主負担の範囲
ポイントは、損耗の原因が「通常の使用によるものか(通常損耗・経年劣化)」、それとも「入居者の不注意や故意によるものか」という点です。前者の修繕費用は大家さんが負担すべきものであり、家賃に含まれていると解釈されます。一方で、後者の費用については、入居者が負担しなければなりません。
具体的にどちらが負担するのか、以下の表に一般的な例をまとめました。
項目 | 借主(入居者)負担の例 | 貸主(大家)負担の例 |
床 | ・飲み物をこぼし放置したシミやカビ ・引越し作業でつけた深い傷 ・ペットによる傷や臭い | ・家具の設置によるへこみや跡 ・日照によるフローリングの色落ち ・ワックスがけ |
壁・天井 | ・タバコのヤニ汚れや臭い ・釘やネジなど下地ボードに達する穴 ・結露を放置して発生したカビ ・落書き | ・画鋲やピンの穴 ・テレビ裏などの電気ヤケ(黒ずみ) ・日照による壁紙の変色 ・ポスター等の掲示による日焼け跡 |
建具・設備 | ・不注意で割ってしまった窓ガラス ・ペットがつけた柱の傷 ・掃除を怠った水回りの頑固な水垢やカビ | ・設備の寿命による故障(給湯器など) ・網戸の張り替え(破損がない場合) ・地震で破損した窓ガラス |
このように、普通に生活していて生じる自然な劣化や汚れまで、入居者が負担する必要はありません。退去時に提示された清算書に、貸主が負担すべき項目が含まれていないか、注意深く確認することが求められます。
ハウスクリーニング代が敷金から引かれることも

原状回復費用と並んで、敷金から差し引かれやすい項目に「ハウスクリーニング代」があります。
結論を先に言うと、ハウスクリーニング代は、本来であれば次の入居者を迎えるために大家さんが負担すべき費用とされています。入居者が通常の清掃(掃き掃除や拭き掃除など)をきちんと実施して退去した場合、専門業者による特別なクリーニング費用まで負担する義務は原則としてありません。
しかし、多くの賃貸借契約書には、「退去時のハウスクリーニング費用は借主の負担とする」という特約が設けられています。この特約に合意して契約している場合、残念ながら入居者が費用を負担することになります。ただし、特に法人が管理する物件では、契約内容や慣行に基づき、特約がなくても標準的な運用として請求される事例もあり、トラブルの原因となることもあります。
特約があればどのような請求も認められるわけではありません。例えば、特約に具体的な金額が明記されておらず、相場を大幅に超える高額なクリーニング代を請求された場合は、消費者契約法に基づき、その特約が無効だと主張できる可能性も残されています。
一般的なハウスクリーニング代の相場は、部屋の間取りによって異なりますが、ワンルームや1Kで2万円から4万円程度です。清算書に記載された金額がこの相場から大きくかけ離れていないか、一つの判断基準にするとよいでしょう。
契約書に特約があった場合は内容を確認

前述の通り、賃貸借契約において「特約」は非常に重要な意味を持ちます。
特約とは、法律の一般的なルールとは異なる特別な約束事を、貸主と借主の間で合意する条項のことです。民法では、当事者間の合意(契約)が法律の規定に優先される「契約自由の原則」があるため、契約書に署名・捺印した以上、原則としてその内容に従う義務が生じます。
したがって、たとえ国土交通省のガイドラインで貸主負担とされている費用であっても、契約書に「借主負担とする」という特約が明記されていれば、基本的にはその支払いを拒否することは難しくなります。ただし、特約が有効と認められるには、一定の条件を満たす必要があると判例で示されています。
特約が有効とされるための主な条件
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的・合理的理由があること
- 借主が特約により、通常の原状回復義務を超えた義務を負うことを認識していること
- 借主がその特約による義務負担の意思表示をしていること
これらの条件を満たしていない、あまりに一方的な特約は無効と判断される可能性があります。
注意すべき特約の例
- ハウスクリーニング特約: 退去時の清掃費用を、汚れの度合いにかかわらず一律で借主負担とするもの。
- 原状回復に関する特約: 畳の表替えや襖の張り替え費用などを、通常損耗や経年劣化であっても借主負担とするもの。
- 敷金償却(敷引き)特約: 関西地方に多いとされますが、近年では地域を問わず一部の物件で見られることがあります。これは預けた敷金の中から、理由を問わず一定額が返還されないことをあらかじめ定めるものです。この慣習自体は有効とされることが多いですが、金額が不当に高額な場合は消費者契約法に基づき無効となる可能性も指摘されています。
契約を結ぶ前に、これらの特約の有無や内容をしっかりと確認し、少しでも疑問があれば不動産会社の担当者に質問することが、後のトラブルを避ける上で最も重要です。
家賃滞納・修繕費の未払いが原因になるケース

敷金が返ってこない理由として、入居者自身の契約不履行が原因であるケースも考えられます。
そもそも敷金は、家賃の滞納など、入居者の債務を担保するために預けるお金です。そのため、もし家賃の支払いが滞っている月があれば、大家さんはその未払い分を敷金から差し引いて清算することができます。これは、敷金の最も基本的な役割であり、正当な権利行使です。
例えば、家賃8万円の物件で敷金を8万円預けており、退去時に1ヶ月分の家賃滞納があった場合、敷金は全額その補填に充てられ、返還額はゼロになります。
同様に、入居中に設備を壊してしまい、その修理費用をまだ支払っていない場合なども、未払いの修繕費として敷金から差し引かれます。これらのケースは、入居者の過失や契約違反が明確であるため、返還されないことに対して異議を唱えるのは難しいでしょう。
退去時の清算で思わぬ相殺にあわないためにも、日頃から家賃の支払いを確実に行い、万が一設備を破損してしまった場合は速やかに大家さんや管理会社に報告し、費用負担について相談しておくことが賢明です。
敷金が返ってこないのは普通にあること?そんな時の正しい対処法
- 敷金が返ってこないのは違法?判断基準と事例
- 敷金を取り戻すための対処法を具体的に紹介
- 管理会社・大家への交渉方法と注意点
- 重要なのは証拠書類と冷静な対応
- 少額訴訟や専門機関への相談の活用方法
敷金が返ってこないのは違法?判断基準と事例

大家さんから提示された清算書に納得できず、「敷金が返ってこないのは違法ではないか」と感じることもあるでしょう。
結論から言うと、不当な理由で敷金を返還しないことは、違法と判断される可能性があります。法律やガイドラインでは、敷金返還に関するルールが定められており、大家さんが一方的に都合の良い解釈で敷金を差し引くことは認められていません。
違法性が問われる主な判断基準は、「原状回復の範囲」と「特約の有効性」です。
原状回復の範囲を逸脱した請求
前述の通り、経年劣化や通常の使用で生じる損耗(通常損耗)の修繕費用は、大家さんが負担するのが原則です。もし、家具の設置による床のへこみや、日光による壁紙の日焼けといった通常損耗の修繕費用を請求された場合、その請求は不当であり、違法性が高いと考えられます。
無効な特約に基づく請求
また、契約書に特約があったとしても、それが消費者契約法第10条に定められた「消費者の利益を一方的に害する条項」にあたる場合は、無効となる可能性があります。ただし、この消費者契約法が適用されるのは、貸主が事業者(不動産会社や事業として賃貸経営を行う大家など)で、借主が消費者である場合に限られます。個人が副業的に貸している物件などでは適用されないケースもあるため注意が必要です。
過去の裁判例でも、通常損耗の補修費用を入居者に負担させる特約について、その有効性が厳しく判断されています。これらの基準に照らし合わせ、明らかに不当な請求だと考えられる場合は、諦めずに次のステップに進むことを検討すべきです。
敷金を取り戻すための対処法を具体的に紹介
納得できない理由で敷金が返還されない場合、感情的に反発するのではなく、段階を踏んで冷静に対処することが大切です。敷金を取り戻すための具体的な手順は、以下の通りです。
- 清算書(明細書)の内容を精査する まずは、大家さんや管理会社から送られてきた敷金の清算書を隅々まで確認します。どの項目に、いくら費用がかかっているのかを把握することが第一歩です。修繕箇所や単価、数量などが具体的に記載されているか、「原状回復費用一式」のように曖昧な表記になっていないかを確認しましょう。
- 管理会社や大家さんに説明を求める(交渉) 明細に不明な点や、納得できない項目があれば、電話やメールで連絡を取り、その費用の根拠について具体的な説明を求めます。このとき、国土交通省のガイドラインや契約書の内容を基に、「この傷は通常損耗にあたるはずです」といった形で、冷静にこちらの主張を伝えます。
- 内容証明郵便を送付する 話し合いで解決しない場合、次の手段として「内容証明郵便」で敷金返還請求書を送付します。内容証明郵便は、「いつ、誰が、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が公的に証明してくれるサービスです。これにより、請求した事実が証拠として残り、相手方に心理的なプレッシャーを与え、支払いに応じさせる効果が期待できます。
- 少額訴訟などの法的措置を検討する 内容証明を送っても返還に応じない場合は、簡易裁判所に「少額訴訟」を提起することを検討します。これは、60万円以下の金銭トラブルを対象とした、比較的簡単で迅速な裁判手続きです。
これらのステップを順番に進めていくことで、解決の可能性を高めることができます。
管理会社・大家への交渉方法と注意点

敷金返還の交渉を成功させるためには、いくつかのコツと注意点があります。
最も大切なのは、感情的にならず、客観的な根拠に基づいて冷静に話し合いを進めることです。高圧的な態度や、一方的な要求は、かえって相手を頑なにし、交渉を難航させる原因となります。
交渉のポイント
- 根拠を明確にする: なぜその請求がおかしいと考えるのか、具体的な理由を伝えましょう。このとき、「国土交通省のガイドラインでは、壁紙の日焼けは貸主負担とされています」や、「契約書の特約には、この修繕に関する記載がありません」といったように、契約書や公的なガイドラインを根拠として示すと、主張の説得力が増します。
- 証拠を提示する: 交渉を有利に進めるためには、客観的な証拠が不可欠です。「入居時に撮影した写真では、この傷は既にありました」というように、具体的な証拠を提示しながら話を進めると効果的です。
- 交渉の記録を残す: 電話で話した内容は、日時や担当者名、会話の要点をメモしておきましょう。可能であれば、やり取りはメールなど、書面に残る形で行うのが望ましいです。万が一、話がこじれて法的な手続きに移行した場合、これらの記録が重要な証拠となります。
注意点
交渉相手が管理会社の場合、担当者はあくまで中立的な立場、あるいは大家さんの代理人として対応します。担当者個人を攻撃するような言動は避け、あくまで契約内容や事実に基づいて話し合いましょう。誠実な態度で臨むことで、相手側も柔軟な対応を検討してくれる可能性があります。
重要なのは証拠書類と冷静な対応
前述の通り、敷金返還の交渉から法的手続きに至るまで、あらゆる場面で最も重要になるのが「客観的な証拠」です。
なぜなら、敷金トラブルは最終的に「言った、言わない」の水掛け論になりやすいためです。主張を裏付ける証拠がなければ、第三者に正当性を理解してもらうことは困難になります。
集めておくべき主な証拠書類
- 賃貸借契約書: 全ての基本となる書類です。原状回復の範囲や特約の内容が記載されています。
- 入居時の写真や動画: 入居した時点で既に存在していた傷や汚れを証明する、最も強力な証拠の一つです。日付がわかるように撮影しておくのが理想です。
- 退去時の写真や動画: 部屋を明け渡す直前の状態を記録しておきます。自分で清掃した箇所などを撮影しておくとよいでしょう。
- 敷金の清算書(明細書): 大家さん側の請求内容を正確に把握するために必要です。
- 交渉記録: 管理会社や大家さんとのメールのやり取りや、会話の録音、通話内容のメモなど、交渉の経緯を示すもの全てが証拠となり得ます。
- 領収書: 敷金を支払った際の領収書や、振込記録がわかる通帳のコピーなど。
これらの証拠を事前に整理し、準備しておくことが、交渉を有利に進めるための鍵となります。そして、どのような状況でも冷静さを失わず、論理的に対応する姿勢が、円満な解決への最短ルートと言えるでしょう。
少額訴訟や専門機関への相談の活用方法

管理会社や大家さんとの話し合い、内容証明郵便の送付でも解決が見られない場合、次のステップとして法的な手段や専門機関への相談を検討することになります。
少額訴訟制度の活用
少額訴訟は、請求金額が60万円以下の金銭トラブルに限定された、簡易的な裁判手続きです。
- 特徴: 原則として1回の期日で審理が終了し、即日判決が下されるため、迅速な解決が期待できます。また、弁護士に依頼せず、自分で手続きを行うことも可能で、費用も比較的安く済みます(訴状に貼る印紙代や郵便切手代で1万円程度から)。
- 手続き: 訴えたい相手(大家さん)の住所地を管轄する簡易裁判所に、訴状と証拠書類を提出して申し立てます。訴状のひな形は裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。
- 注意点: 相手方が少額訴訟での審理を拒否した場合、通常の民事訴訟に移行することがあります。
専門機関への相談
いきなり訴訟を起こすことに抵抗がある場合は、まず公的な相談窓口を利用するのがおすすめです。
- 国民生活センター・消費生活センター: 全国の市区町村に設置されており、消費者トラブル全般に関する相談を無料で受け付けています。敷金トラブルに関する相談も多く寄せられており、専門の相談員から今後の対処法について具体的なアドバイスをもらえます。場合によっては、事業者との間に入って交渉の手伝い(あっせん)をしてくれることもあります。(参考:国民生活センター)
- 法テラス(日本司法支援センター): 国によって設立された、法的なトラブル解決のための総合案内所です。経済的な余裕がない人などを対象に、無料の法律相談や、弁護士・司法書士費用の立替え制度などを提供しています。(参考:法テラス)
- 弁護士会・司法書士会: 各都道府県の弁護士会や司法書士会でも、法律相談会などを実施しています。
これらの制度や機関をうまく活用し、一人で抱え込まずに専門家の知見を借りることが、問題解決への確実な一歩となります。
まとめ:敷金が返ってこないのは普通と諦める前に
この記事で解説してきた通り、敷金が返ってこないことは決して「普通」や「当たり前」のことではありません。最後に、敷金トラブルを避け、万が一の際に正当な権利を主張するための要点をまとめます。
- 敷金は原則として返還されるべき預け金である
- 返金されないケースの約3割は存在するが諦めるのは早い
- 返還されない主な理由は原状回復費用や特約によるもの
- 経年劣化や通常損耗の修繕は貸主の負担が原則
- 借主の故意や過失による傷や汚れは借主負担となる
- 契約書の特約はガイドラインより優先される場合がある
- ハウスクリーニング代は特約がなければ貸主負担が基本
- 契約前に特約の内容を十分に確認することが最も重要
- 不当な請求にはまず清算書の明細を確認し根拠を問う
- 交渉は感情的にならず証拠に基づいて冷静に行う
- 入居時に部屋の写真を撮っておくことが強力な証拠になる
- 話し合いで解決しない場合は内容証明郵便が有効
- 最終手段として少額訴訟という制度がある
- 国民生活センターなど無料の専門機関に相談できる
- 正しい知識を身につけ諦めずに対応することが大切