80歳でも借りられる高齢者の賃貸契約|審査に通る方法と探し方のコツ

80歳でも借りられる高齢者の賃貸契約|審査に通る方法と探し方のコツ

80歳になっても「自分らしく暮らしたい」と思うのは自然なことです。ところが実際に賃貸物件を探そうとすると、「高齢者は入居を断られるのでは?」「老後は賃貸を借りられないって本当?」といった不安に直面する方も少なくありません。年齢を理由に断られるのではないか、何歳まで契約できるのか──そんな疑問や心配は尽きないものです。

しかし実際には、80歳を過ぎても安心して借りられる物件や制度は存在します。この記事では、高齢者が賃貸契約を結ぶ際に直面しやすい課題とその解決策を整理しながら、UR賃貸や公営住宅といった選択肢、さらに入居審査に通るための具体的な準備方法まで分かりやすく解説します。

この記事を読むことで、以下の点が明確になります。

  • 80代の賃貸契約が難しいとされる本当の理由
  • 入居審査に通りやすくなるための具体的な準備や方法
  • UR賃貸や公営住宅など高齢者向け物件の種類と特徴
  • 安心して暮らせる物件選びのポイントと利用できる制度
目次

80歳高齢者の賃貸契約が難しい理由

高齢者が賃貸住宅を探す際には、若い世代とは異なる特有の課題に直面することがあります。ここでは、なぜ80歳以上の高齢者が賃貸契約を結びにくいと感じるのか、その背景にある理由を多角的に解説します。

  • 高齢者は賃貸契約できますか?
  • 老後、賃貸を借りられないは嘘?
  • 高齢者が賃貸を借りられない理由とは
  • 賃貸が借りられない年齢の目安
  • 賃貸契約は何歳までできるのか
  • 80歳以上で賃貸を探すときの注意点

高齢者は賃貸契約できますか?

高齢者は賃貸契約できますか?

はい、高齢者であるという理由だけで、賃貸契約を結べないということはありません。日本の法律には賃貸契約に関する明確な年齢制限はなく、80歳以上の方でも契約の当事者になることができます。

ただし、実際には入居審査の過程で、年齢に付随する様々な懸念から契約に至らないケースが多いのが実情です。年齢を理由に契約を一律で拒否することは社会的に望ましくないという考え方が基本ですが、宅地建物取引業法に年齢差別を直接禁止する明文規定はありません。そのため、貸主には契約相手を総合的に判断する自由が認められており、その結果として断られることがあるのです。

重要なのは、年齢そのものではなく、「安定して家賃を支払い続けられるか」「物件で問題なく暮らしていけるか」という点を貸主がどう判断するかです。

老後、賃貸を借りられないは嘘?

老後、賃貸を借りられないは嘘?

「老後は賃貸を絶対に借りられない」という話は、明確な誤りです。しかし、「若い頃に比べて借りにくくなる」というのは事実と捉えるべきでしょう。

実際に、多くの高齢者の方々が賃貸住宅で生活を送っています。総務省が公表した「平成30年住宅・土地統計調査」によると、65歳以上の一人暮らし世帯のうち33.5%、つまり約3分の1が賃貸物件を利用していることがわかっています。このデータからも、高齢者が賃貸を借りることが不可能ではないことが理解できます。

問題は、貸主側が抱えるリスクへの不安が、入居への心理的な障壁となっている点にあります。そのため、借り手側が適切な対策を講じ、貸主の不安を解消することで、契約の可能性は十分に高まるのです。

高齢者が賃貸を借りられない理由とは

高齢者が賃貸を借りられない理由とは

貸主が高齢者の入居に慎重になる理由は、主に「経済面」「健康面」「保証人」という3つのリスクが懸念されるためです。貸主の立場からすれば、安定した家賃収入の確保と、所有する物件の資産価値維持は経営の根幹に関わる問題です。

経済的なリスク

多くの場合、高齢になると主な収入源は公的年金となります。現役世代の給与収入と比較すると、収入が限られるため、将来的な家賃の滞納を心配されることがあります。また、予期せぬ病気や介護が必要になった際の急な出費が、家賃の支払いに影響を与えるのではないかという懸念も持たれがちです。

健康上のリスク

高齢になると、どうしても健康面での不安が増えてきます。特に一人暮らしの場合、室内での急な体調不良や転倒といった事態が起きた際に、発見が遅れる「孤独死」のリスクが懸念されることがあります。これは全ての貸主が同様に考えるわけではありませんが、一部の貸主にとっては、万が一発見が遅れた場合の特殊清掃費用や物件の資産価値低下は大きな懸念材料となり得ます。

保証人の問題

賃貸契約では、家賃滞納などのリスクに備えて連帯保証人を求められるのが一般的です。しかし、高齢者の場合、配偶者がすでに他界していたり、兄弟姉妹も同じく高齢であったりするため、保証人としての役割を果たせる親族を見つけるのが難しいケースが少なくありません。頼れる身内がいないという状況が、契約の障壁になることがあります。

賃貸が借りられない年齢の目安

賃貸が借りられない年齢の目安

法律で定められた明確な年齢制限はありませんが、不動産の実務上、一般的に65歳や70歳を過ぎると審査が慎重になる傾向が見られます。

これは、多くの方が定年退職を迎え、主な収入が年金に切り替わる時期であることや、健康上のリスクが高まると一般的に考えられているためです。実際に、国土交通省の調査などでも、家賃債務保証会社が70代以上の審査に慎重な姿勢を示すデータがあり、貸主側の認識を反映したものと考えられます。

もちろん、これはあくまで目安です。70代や80代であっても、十分な収入や資産があれば問題なく契約できるケースは多くあります。年齢という数字だけで判断されるのではなく、個々の経済状況や健康状態が総合的に評価されると考えるべきです。

賃貸契約は何歳までできるのか

賃貸契約は何歳までできるのか

賃貸契約に、法律上の年齢上限はありません。そのため、100歳であっても契約を結ぶこと自体は可能です。実際に、90歳を超えても元気に賃貸住宅で一人暮らしをされている方もいらっしゃいます。

重要なのは年齢ではなく、個別の審査基準をクリアできるかどうかです。審査では、主に以下の点が確認されます。

  • 安定した家賃支払い能力の有無(年金収入、預貯金額など)
  • 連帯保証人または家賃保証会社の利用が可能か
  • 緊急時に対応してくれる連絡先(親族など)の有無
  • 心身ともに健康で、自立した生活を送れるか

これらの条件を満たしていることを客観的に示すことができれば、年齢を理由に契約を諦める必要は全くありません。

80歳以上で賃貸を探すときの注意点

80歳以上で賃貸を探すときの注意点

80歳以上の方が賃貸住宅を探す際には、若い世代とは異なる、高齢期特有の視点を持つことが大切になります。物件の間取りや家賃といった一般的な条件に加えて、以下の点にも注意を払う必要があります。

第一に、心身機能の変化に対応できる住環境かどうかを確認することです。今は健康であっても、将来的に足腰が弱くなる可能性を考え、室内の段差が少ないバリアフリー仕様の物件や、エレベーター付きの建物を優先的に検討することが望ましいです。

第二に、万が一の事態への備えです。かかりつけの医療機関へのアクセスが良いか、家族や親族がすぐに駆けつけられる距離か、といった点は安心して生活を送る上で非常に重要な要素となります。物件によっては見守りサービスが付帯している場合もあるため、確認してみる価値はあります。

最後に、物件探しや契約手続きは、想像以上に時間と労力がかかるものです。一人ですべてを抱え込まず、早い段階で家族や地域の専門家(地域包括支援センターなど)に相談し、協力を得ながら進めることが成功の鍵といえます。

80歳高齢者の賃貸契約を成功させる方法

貸主が抱える不安を理解した上で、適切な準備と対策を講じることが、80歳からの賃貸契約を成功させるための鍵となります。ここでは、審査の通過率を高め、希望の物件を見つけるための具体的な方法を解説します。

  • 高齢者が賃貸を借りるための具体的な方法
  • 高齢者でも借りられるアパートの見つけ方
  • 選択肢としての高齢者向け公営賃貸住宅
  • UR賃貸での高齢者一人暮らしという選択
  • URに高齢者が入居できる条件
  • 80歳からの一人暮らしの賃貸探し
  • 80歳高齢者の賃貸契約を成功させる要点

高齢者が賃貸を借りるための具体的な方法

高齢者が賃貸を借りるための具体的な方法

貸主が抱える「経済面」「健康面」「保証人」の不安を一つひとつ解消していくことが、入居審査を通過するための最も効果的なアプローチです。具体的な対策として、以下の3点が挙げられます。

経済的な安定性を客観的に示す

家賃の支払い能力に問題がないことを、具体的な資料で証明します。

  • 預貯金の証明: 預貯金通帳のコピーなどを提示し、十分な資産があることを見せます。これは法的なルールではありませんが、不動産の実務上の目安として、家賃の2年分(24ヶ月分)以上の預貯金があると、支払い能力の証明として評価されやすいと言われています。
  • 収入の証明: 年金の受給額がわかる証明書(年金振込通知書など)を提出します。年金以外の収入がある場合は、確定申告書の控えなども併せて提出すると良いでしょう。

家族や親族の協力を得る

家族のサポート体制が整っていることを示すことで、貸主は安心感を持ちやすくなります。

  • 連帯保証人: 可能であれば、現役で働いている子供や親族に連帯保証人になってもらうのが最も確実な方法です。
  • 不動産会社への同行: 物件の内見や契約手続きの際に家族に同行してもらうと、緊急時にも協力が得られるという印象を与えられます。
  • 近居: 子供世帯の家の近くに住む「近居」も有効です。何かあってもすぐに駆けつけられる距離に家族がいることは、大きな安心材料となります。

各種保証制度や支援サービスを活用する

連帯保証人を頼める人がいない場合でも、諦める必要はありません。公的な制度や民間のサービスを利用することで、問題を解決できる場合があります。

  • 家賃債務保証会社: 保証料を支払うことで、連帯保証人の役割を担ってくれる会社です。近年は高齢者の利用に対応したプランを用意している保証会社も増えています。
  • 居住支援法人: 高齢者など住宅の確保が難しい人々の住まい探しをサポートするNPO法人や社会福祉法人です。物件情報の提供や、大家さんとの間に入って交渉を行ってくれることもあります。

高齢者でも借りられるアパートの見つけ方

高齢者でも借りられるアパートの見つけ方

やみくもに探すのではなく、最初から高齢者の入居に前向きな物件や不動産会社に絞ってアプローチすることが、効率的な物件探しの近道です。

探し方としては、まず不動産情報ポータルサイトの活用が挙げられます。検索条件で「高齢者相談可」「シニア歓迎」「保証人不要」といった項目にチェックを入れて探すことで、可能性の高い物件を効率的に見つけることができます。

また、不動産会社を選ぶ際には、地域に密着した営業を行っている会社や、高齢者向けの物件を専門的に扱っている会社に相談するのも一つの手です。大手だけでなく、地元の事情に詳しい中小の不動産会社が、大家さんとの信頼関係から、一般には公開されていない物件を紹介してくれるケースもあります。

さらに、自治体の福祉課や社会福祉協議会、地域包括支援センターといった公的な相談窓口も積極的に利用しましょう。これらの機関は、高齢者の住まいに関する情報を持っており、住宅セーフティネット制度に登録された物件や、地域の居住支援法人を紹介してくれることがあります。

選択肢としての高齢者向け公営賃貸住宅

都道府県や市区町村が運営する公営住宅(県営住宅、市営住宅など)は、高齢者にとって非常に有力な選択肢の一つです。

最大のメリットは、年齢を理由に入居を断られることがなく、家賃が所得に応じて低く設定されている点です。これにより、経済的な負担を大幅に軽減できます。多くの公営住宅では、高齢者世帯向けに抽選時の優遇措置(当選倍率の引き上げなど)が設けられており、一般の世帯よりも入居しやすい配慮がなされています。

一方で、デメリットも存在します。所得が一定額以下でなければ申し込めないという所得制限があるほか、人気が高いために募集に対して応募が殺到し、抽選に外れてすぐに入居できないケースが多いのが実情です。また、建物の老朽化が進んでいる物件も少なくありません。申し込みの時期や条件は自治体によって異なるため、お住まいの地域の役所のウェブサイトや広報誌などで、募集情報をこまめに確認することが大切です。

UR賃貸での高齢者一人暮らしという選択

UR賃貸での高齢者一人暮らしという選択

独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が管理するUR賃貸住宅は、高齢者が安心して一人暮らしを送るための選択肢として、近年ますます注目されています。

UR賃貸住宅の大きな魅力は、入居者にとっての負担が少ない契約条件にあります。

  • 礼金が不要
  • 仲介手数料が不要
  • 契約更新時の更新料が不要
  • 連帯保証人が不要

これらの「4つのナシ」により、入居時の初期費用や将来にわたる費用負担を大幅に抑えることができます。

また、物件の多くは敷地内に緑地や公園が整備され、歩行者の安全に配慮した「歩車分離」の設計がなされているなど、ゆとりある住環境が特徴です。高齢者が暮らしやすいよう、室内をバリアフリー化した物件や、緊急通報システムを備えた物件も数多く供給されています。

URに高齢者が入居できる条件

UR賃貸住宅には、高齢者向けのさまざまなタイプの物件があり、それぞれ申込資格が設けられています。しかし、基本的な収入要件などを満たせば、80歳以上の方でも入居は十分に可能です。

一般的なUR賃貸住宅の場合、申込本人の平均月収額が、家賃に応じて定められた「基準月収額」以上であることが主な条件です。この収入には、公的年金も含まれます。

もし収入が基準に満たない場合でも、「貯蓄基準」という制度を利用できます。これは、金融機関に一定額以上の貯蓄があることを証明できれば、収入要件を満たしたものとみなされる仕組みです。

さらに、高齢者向けに特化した物件タイプもあり、それぞれに入居条件が定められています。

UR高齢者向け住宅の種類主な特徴と入居条件の例
高齢者向け優良賃貸住宅バリアフリー化され、緊急時対応サービス付き。所得に応じて家賃補助がある。申込本人が満60歳以上などの条件あり。
高齢者等向け特別設備改善住宅浴室の段差緩和など、設備を改善した住宅。満60歳以上の高齢者または障がい者を含む世帯が対象。
健康寿命サポート住宅転倒防止に配慮した室内に加え、外出したくなるような屋外環境も整備。世帯の所得月額が一定以下の満60歳以上の世帯などが対象で、家賃減額制度もある。
シルバー住宅生活援助員(LSA)によるサポートや、セキュリティシステムが導入されている。原則として満65歳以上の方が対象(東京都・大阪府のみ)。

これらの条件や制度内容は、地域によって提供状況が異なったり、変更されたりする可能性があります。お申し込みの際は、必ずUR都市機構の公式ウェブサイトや最寄りの営業センターで最新の情報を確認するようにしてください。

80歳からの一人暮らしの賃貸探し

80歳から新たに一人暮らしの住まいを探すことは、決して簡単なことではありません。体力的な負担はもちろん、多くの情報を整理し、判断を下す必要があります。成功のためには、計画的に、そして周囲の力を借りながら進めることが何よりも大切です。

事前の準備と相談

まず、一人で抱え込まずに、家族や信頼できる人に相談することから始めましょう。子供や親族、あるいは担当のケアマネージャーや地域包括支援センターの専門家に事情を話し、どのようなサポートが必要か、どのような住まいが適しているかを一緒に考えてもらうことが重要です。

内見時のチェックポイント

物件の内見時には、部屋の間取りや日当たりだけでなく、「実際の生活」を具体的に想像しながら、以下の点を確認することが求められます。

  • 建物・室内: 玄関から部屋までの動線に段差はないか。エレベーターはあるか。トイレや浴室に手すりを設置できそうか。
  • 周辺環境: 最寄りのスーパーや病院、バス停までの道のりは平坦か。夜間の道の明るさや治安はどうか。
  • 共用部: ゴミ置き場は清潔で、出しやすい場所にあるか。駐輪場の利用しやすさはどうか。

これらの点を、ご自身の体力と照らし合わせながら、慎重に確認する必要があります。一度だけでなく、曜日や時間を変えて複数回訪れてみるのも良い方法です。

80歳高齢者の賃貸契約を成功させる要点

この記事で解説してきた、80歳からの賃貸契約を成功させるための重要なポイントを以下にまとめます。

  • 高齢を理由に契約を諦める必要はない
  • 貸主の懸念は「経済面」「健康面」「保証人」の3点
  • 「絶対に借りられない」は誤りだが「借りにくい」のは事実
  • 法律上の年齢上限はなく何歳でも契約は可能
  • 審査が慎重になる目安は実務上65歳から70歳あたり
  • 家賃2年分以上の預貯金提示は経済的信用の証明になることがある
  • 現役世代の子供や親族の連帯保証は非常に有効
  • 保証人がいない場合は家賃債務保証会社の利用を検討する
  • 「シニア歓迎」や「高齢者相談可」の物件から探すのが効率的
  • 公営住宅は家賃が安価だが入居待ちが多い傾向
  • UR賃貸は保証人不要で高齢者向けサービスが充実
  • URは収入基準を満たせば年金や貯蓄でも申込可能
  • 物件選びはバリアフリーと周辺環境を重視する
  • 家族や地域包括支援センターなど専門家の協力を得る
  • 一人で抱え込まず早めに計画的に行動を開始する
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