家賃もったいないは嘘?持ち家の見えないコストと老後の真実を解説

家賃もったいないは嘘?持ち家の見えないコストと老後の真実を解説

こんにちは。賃貸トラブル解決ナビ、運営者の熊坂です。ふとした瞬間に「家賃を払い続けるのはもったいないから家を買ったほうがいいんじゃないか」と不安になること、ありますよね。私も不動産業界に長くいますが、この悩みは本当に多くの人が抱えています。ネットで検索してみると「家賃 もったいない 嘘」や「持ち家と賃貸どっちが得か」といったキーワードがたくさん並んでいて、結局どれが正解なのか迷ってしまうことも多いはずです。老後の生活に対する不安や資産形成の計算など、考えるべきポイントは山積みです。今回は、宅建士としての視点と客観的なデータを交えながら、この「永遠のテーマ」について一緒に深掘りしていきましょう。

  • 持ち家購入に伴う住宅ローン利息や税金といった「隠れたコスト」の正体
  • 日本の木造住宅における資産価値の減少と「22年の壁」
  • 賃貸派が将来のために実践すべき「差額投資」という資産形成術
  • 高齢になっても賃貸で安心して暮らすための具体的なリスク対策
目次

家賃はもったいないという嘘と見えないコスト

家賃はもったいないという嘘と見えないコスト

「家賃は掛け捨てだけど、持ち家は資産になる」という言葉、不動産の営業トークでもよく耳にしますよね。一見すると正論のように聞こえますが、実はこの言葉には大きな落とし穴が隠されています。まずは、感情論ではなく経済的な視点から、持ち家に潜む「見えない家賃」の正体を暴いていきましょう。

持ち家と賃貸はどっちが得か計算する

「持ち家と賃貸、金銭的にどっちが得なのか?」という議論は、実は非常に複雑です。多くの人がやりがちなのが、現在の「毎月の家賃」と「毎月のローン返済額」だけを単純比較してしまう計算です。「今の家賃が10万円で、ローンなら月々9万円で住めるから買ったほうが得!」と飛びついてしまうのは、少し早計かもしれません。

正確に損得を計算するためには、目に見える支払額だけでなく、将来にわたって発生するコストやリスクをすべてテーブルに乗せる必要があります。たとえば、持ち家には初期費用として物件価格の数%〜10%程度の諸費用がかかりますし、住み始めてからも税金や修繕費がかかり続けます。一方で賃貸には更新料が必要ですが、設備の故障は大家さんが直してくれます。

さらに重要なのが「時間の経過による価値の変化」です。日本の住宅、特に建物部分は年々価値が下がっていきます。購入価格と売却価格の差額(キャピタルロス)もコストとして計算に入れなければなりません。ここを見落として「月々の支払い」だけで判断すると、後で「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。

ここがポイント

「毎月の支払い額」だけの比較は危険です。初期費用、維持費、税金、そして将来の売却価格まで含めたトータルコストで判断する癖をつけましょう。

家賃を払い続けるのは無駄ではない理由

家賃を払い続けるのは無駄ではない理由

「家賃はドブに捨てるようなもの」という表現、よく聞きますよね。私も若い頃はそう思わされたことがありますが、冷静に考えるとこれは少し極端な言い方です。家賃は決して無駄金ではなく、対価を支払って「住居というサービス」を利用していると考えるのが経済学的には正解です。

家賃を支払うことで得られる最大のメリットは「自由」と「リスクヘッジ」です。もし隣人トラブルに巻き込まれたり、転勤が決まったり、収入が減ったりした場合、賃貸なら比較的簡単に引っ越すことができます。これは、数千万円の借金を背負って場所に縛られる持ち家にはない、強力な武器なんです。

また、設備の故障対応も基本的には貸主の負担です。エアコンが壊れても、給湯器が壊れても、電話一本で直してもらえますよね。この「管理の手間とコストをアウトソーシングしている」費用が家賃に含まれていると考えれば、それは決して無駄な出費ではありません。「いつでも身軽に動ける権利」を毎月買っている、という感覚を持つと、家賃への見え方が変わってくるはずです。

住宅ローンの利息は銀行への家賃である

住宅ローンの利息は銀行への家賃である

持ち家派の方が意外と見落としがちなのが、住宅ローンの「利息」というコストです。家を買えば家賃はなくなりますが、その代わりに銀行に対して巨額の手数料を払うことになります。これを私は「銀行への家賃」と呼んでいます。

具体的にシミュレーションしてみましょう。例えば、4,000万円の物件を、金利0.7%、35年返済(ボーナス払いなし)でフルローンを組んだとします。この場合、35年間で支払う利息の総額は約511万円にもなります。元本の4,000万円は資産(負債の返済)になりますが、この511万円は完全に消えてなくなるコストです。

もし金利が上昇すれば、この負担はさらに膨れ上がります。変動金利は魅力的ですが、将来的に金利が上がれば「銀行への家賃」が跳ね上がり、家計を圧迫するリスクがあります。持ち家だからといって、住居費がすべて自分の資産になるわけではないのです。金融機関からお金を借りるためのレンタル料、それが利息の正体であり、構造的には賃貸の家賃と変わりません。

項目金額・条件内容
物件価格(借入)4,000万円頭金なしフルローン
金利・期間0.7%・35年変動金利を想定
総支払額約4,511万円元本4000万+利息511万

固定資産税という一生続く地代の負担

固定資産税という一生続く地代の負担

「ローンを完済すれば自分のもの」というのは、半分正解で半分間違いです。なぜなら、日本に不動産を所有している限り、「固定資産税」と「都市計画税」という税金を、国や自治体に対して一生払い続けなければならないからです。これは実質的に、国家に対する「地代」のようなものです。

新築の戸建てやマンションを買った直後は、「新築軽減措置」などで税金が安くなっていることが多いのですが、一定期間(戸建てなら3年、マンションなら5年など)が過ぎると、この軽減措置が終了し、いきなり税額が跳ね上がることがあります。これを「固定資産税のジャンプ」なんて呼んだりもします。

地域や物件の評価額にもよりますが、35年間で支払う固定資産税の総額は数百万円から、場合によっては1,000万円近くになることもあります。賃貸には更新料がありますが、この固定資産税の総額に比べればかわいいものかもしれません。持ち家を持つということは、ローンが終わっても「税金」という名の家賃を一生払い続ける覚悟が必要なのです。

固定資産税の支払い

最近ではクレジットカードやスマホ決済(PayPayや楽天ペイなど)で納税できる自治体も増えています。どうせ払うならポイント還元を狙って少しでも「実質コスト」を下げるのが賢い方法ですね。

マンションの管理費と修繕費の実態

マンション購入を検討している方が特に注意すべきなのが、毎月の「管理費」と「修繕積立金」です。これらは住宅ローンの返済とは別に、必ず支払わなければならない固定費です。「家賃と同じくらいのローン返済額で買える!」という広告には、この管理費等が含まれていないことがほとんどなので注意が必要です。

特に恐ろしいのが修繕積立金の値上げです。新築分譲時は、購入しやすくするために修繕積立金が安く設定されていることが一般的です(段階増額方式)。しかし、大規模修繕工事が近づくにつれて、あるいは物価上昇に伴って、5年後、10年後に積立金が2倍、3倍に跳ね上がるケースは珍しくありません。

戸建ての場合も安心はできません。管理費こそかかりませんが、外壁塗装や屋根の防水工事、給湯器の交換など、すべて自己責任で行う必要があります。30年間で考えると、戸建てでも1,000万円以上のメンテナンス費用がかかるという試算もあります。賃貸なら大家さんが負担してくれるこれらの費用を、持ち家ではすべて自分で積み立てておかなければならないのです。

木造住宅の資産価値は20年で消滅する

木造住宅の資産価値は20年で消滅する

日本の不動産市場において、最も残酷な現実の一つが「建物の減価」です。特に木造住宅の場合、法定耐用年数は22年と定められています。実際の市場取引の現場でも、築20年を超えた木造住宅は、建物自体の価値はほぼ「ゼロ」とみなされ、土地の価格だけで取引されることが一般的です。

これはどういうことかと言うと、新築時に建物代として支払った2,000万円や3,000万円が、20年かけて溶けてなくなることを意味します。例えば建物価格が2,200万円だとすると、22年で割れば年間100万円、月額にして約8.3万円ずつ価値が消滅している計算になります。

この「毎月消えていく8.3万円」は、誰かに払っているわけではありませんが、資産価値の減少という意味では、賃貸の家賃を払っているのと経済的には全く同じです。「持ち家は資産になる」と言いますが、木造住宅に関しては、土地の価値が上がらない限り、建物部分は「巨大な消費財」であることを理解しておく必要があります。

資産価値の減少リスク

「土地があるから大丈夫」と思うかもしれませんが、人口減少が進むエリアでは土地の価格自体が下落するリスクも高いです。建物価値ゼロ+土地値下がりとなれば、売却してもローンが残る「オーバーローン」状態になる危険性があります。

家賃はもったいないという嘘を暴く老後の真実

家賃はもったいないという嘘を暴く老後の真実

「若いうちは賃貸でもいいけど、老後はどうするの?」「一生賃貸だと老後が悲惨になるのでは?」という不安の声は非常によく聞きます。確かに、高齢になると賃貸物件が借りにくくなるという話は昔からありますが、時代は変わりつつあります。ここからは、老後リスクの真実と対策について見ていきましょう。

一生賃貸で暮らす老後は悲惨なのか

「高齢者は孤独死のリスクがあるから貸したくない」という大家さんが多いのは事実ですが、最近ではこの状況が劇的に改善されつつあります。少子高齢化で空き家が増えている今、高齢者も貴重なお客様だからです。

具体的には、「家賃債務保証業者」のサービスが拡充しており、連帯保証人がいない高齢者でも契約できる物件が増えています。また、UR賃貸住宅(旧公団住宅)のように、礼金・更新料・保証人が不要で、高齢者に対しても門戸を広く開いている公的な賃貸住宅も存在します。

「老後は借りられない」というのは、もはや過去の常識になりつつあります。見守りサービス付きの高齢者向け住宅も増えていますし、適切な保証サービスを利用すれば、住居を確保することは十分に可能です。「一生賃貸=路頭に迷う」という極端な恐怖心を持つ必要はありません。

独身が家を買って後悔するリスク

独身が家を買って後悔するリスク

特に独身の方(男女問わず)が、「家賃がもったいないから」という理由だけでマンションを購入し、後悔するケースが後を絶ちません。その最大の理由は「ライフスタイルの変化に対応できなくなること」です。

例えば、結婚することになった、親の介護で実家に帰ることになった、転勤が決まった、あるいは隣人とトラブルになった…。そんな時、賃貸ならすぐに引っ越せますが、持ち家の場合は「売却」か「賃貸に出す」しかありません。しかし、売却には仲介手数料(物件価格の3%+6万円)などの諸経費がかかりますし、すぐに買い手が見つかるとは限りません。

特に独身で家を買うなら、自分が住むことよりも「資産価値(リセールバリュー)」を最優先にするべきです。駅徒歩5分以内、50平米以上など、誰にでも貸せて、誰にでも売れる物件でない限り、将来的にその家が足かせになってしまう「流動性リスク」を抱えることになります。

持ち家信仰が招く将来の不安と盲点

日本人の心に深く根付いている「持ち家信仰」。自分の城を持つことは素晴らしいことですが、それが逆に将来の不安を招くこともあります。不動産を持つということは、自分の資産の大部分を「たった一つの場所」に集中投資するということです。

もしその地域で大きな災害が起きたり、近隣に迷惑施設ができたり、地価が暴落したりすれば、資産の大半を失うことになります。金融の世界では「卵を一つのカゴに盛るな(分散投資せよ)」と言われますが、持ち家購入はまさに「卵を一つのカゴに盛る」行為そのものです。

また、災害リスクだけでなく、近隣トラブルのリスクも無視できません。賃貸なら嫌な隣人がいれば引っ越せば済みますが、持ち家ではそうはいきません。精神的な平穏をお金(家賃)で買っていると考えれば、賃貸のメリットは計り知れません。所有することのリスクを正しく理解せず、盲目的に「買えば安心」と考えるのは危険です。

賃貸派が実践すべき差額投資の重要性

賃貸派が実践すべき差額投資の重要性

ここが今回の記事で一番お伝えしたいポイントです。「家賃もったいない」論に対する最強の反論は、「機会損失(機会費用)」の考え方です。つまり、家を買うために使う頭金や、毎月の修繕積立金などを、別の場所で運用していたらどうなっていたか、という視点です。

賃貸派の賢い戦略は、持ち家を買わずに浮いた初期費用や、固定資産税・修繕費がかからない分のお金を、ただ貯金するのではなく「投資」に回すことです。例えば、S&P500や全世界株式(オール・カントリー)などのインデックスファンドに長期で積立投資をした場合、歴史的には不動産の地価上昇率を上回るリターンを出している期間も多いのです。

「家賃を払いながら投資なんて無理」と思うかもしれませんが、持ち家の人が支払う固定資産税や修繕費の分を投資に回すだけでも、20年、30年後には大きな差になります。日本の不動産という流動性の低い資産を持つ代わりに、世界中の成長企業に投資して資産を増やす。これこそが、現代における賢い賃貸派の生存戦略と言えるでしょう。

インフレ対策

「賃貸はインフレで家賃が上がるのが怖い」と言われますが、株式などの金融資産を持っておくことは強力なインフレヘッジ(対策)になります。家賃が上がるような経済状況では、株価も上がっている可能性が高いからです。

持ち家購入が正解になる人の条件

ここまで持ち家のリスクを強調してきましたが、もちろん持ち家が「正解」になる人もいます。すべてのケースで賃貸が良いわけではありません。経済合理性の観点から、持ち家を買っても損をしにくい、あるいは幸せになれる条件は以下の通りです。

  • 長期定住が確定している人:転勤の可能性がなく、今後30年以上その土地に住み続ける強い意思がある場合。
  • 資産価値が落ちない立地を選べる人:都心へのアクセスが良く、駅から徒歩6分〜10分以内の好立地など、売りたいときにすぐ売れる物件を買える場合。
  • 低金利の恩恵を最大限受けられる人:公務員や大企業の会社員など、属性が良く、ネット銀行などの超低金利でローンを組める場合。
  • 家のメンテナンスを楽しめる人:DIYや庭の手入れなど、家の維持管理を「コスト」ではなく「趣味・楽しみ」と捉えられる場合。

これらの条件に当てはまるなら、持ち家は経済的にも精神的にも素晴らしい選択になり得ます。「家賃がもったいないから」という消極的な理由ではなく、「この場所でこういう暮らしがしたい」という積極的な理由と勝算があるなら、購入に踏み切るのも良いでしょう。

家賃はもったいないという嘘に惑わされない

結局のところ、「家賃はもったいない、持ち家は資産」という単純な二元論は、不動産を売りたい側のマーケティングメッセージとしての側面が強いです。現代の日本において、不動産は必ずしも右肩上がりの資産ではありません。

大切なのは「所有」か「利用(賃貸)」かという選択において、自分自身が何を重視するかです。数千万円の借金をしてでも「自分の城」という満足感と、住居の仕様を自由に変えられる権利を手に入れるのか(所有)。それとも、家賃というコストを払ってでも、ライフスタイルの変化に身軽に対応できる自由と、資産運用の種銭を手に入れるのか(利用)。

どちらを選んでも、必ずコストとリスクは発生します。「家賃=損」という思い込みを捨てて、自分の人生設計(ライフプラン)にはどちらのリスクが許容できるかを冷静に考えること。それこそが、後悔しない住まい選びの第一歩です。この記事が、あなたの住まい選びの参考になれば嬉しいです。

免責事項

本記事のシミュレーションや数値は一般的な目安であり、個別の物件や経済状況によって異なります。不動産購入や投資に関する最終的な判断は、専門家にご相談の上、ご自身の責任で行ってください。

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