
賃貸物件の契約を進める中で、契約書や家賃明細に、時に見慣れない「変動費」という項目が記載されていることがあります。そもそも家賃の変動費とは何なのか、多くの方が疑問に思うことでしょう。支払い先からの通知で初めて高額な請求に気づき、これが毎月続くのかと不安になるかもしれません。
また、一人暮らしを始める際には、家計の固定費と変動費の違いを理解し、変動費と固定費のどちらを減らすべきかと考える場面も出てきます。賃料は固定費か変動費かという基本的な問いから、なぜ家賃が変動するのでしょうかという疑問、さらには変動費に更新料は含まれるのか、家賃保証会社の契約書との関連性、事業者に必要な家賃の変動費に関する勘定科目の知識まで、その範囲は多岐にわたります。この記事では、賃貸契約における変動費の正体と、それにまつわる様々な疑問を一つひとつ丁寧に解説していきます。
この記事でわかること
- 家賃における変動費の具体的な内容
- 固定費との明確な違いと見分け方
- 契約時に注意すべき変動費の確認ポイント
- 変動費に関するよくある疑問とその回答
契約前に知りたい家賃の変動費とは?
- そもそも家賃の変動費とは何か
- 支払い先からの通知で金額が確定
- 家賃の変動費は毎月変わるのか
- 賃料は固定費か変動費かの違い
- 更新料は変動費に含まれるのか
- なぜ家賃そのものが変動するのか
そもそも家賃の変動費とは何か

賃貸契約における「変動費」とは、一般的に、毎月の使用量や物件の状況に応じて金額が変わる費用のことを指します。ただし、「変動費」という項目名が契約書で使われるのは必ずしも一般的ではなく、多くの場合「水道代実費」「共益費」のように具体的な名目で記載されます。ここでは、不動産会社や管理会社によって「変動費」と表記されるケースについて解説します。
変動費が発生する理由として、集合住宅では入居者が共同で利用する部分の費用や、個別の使用量に応じた費用が生じるためです。これらを大家さんや管理会社が一旦取りまとめ、各戸に割り振って請求する際に、便宜上変動費という項目が用いられることがあります。
具体例として最も多いのは、水道料金が大家さんの一括検針で、各戸の使用量に応じて請求されるケースです。また、物件によっては共用部分の電気代などが含まれることもありますが、これらの費用は定額の「共益費」に含まれる形がより一般的です。
一方で、アパート経営の観点では、空室対策の広告宣伝費や退去時の原状回復費なども運営上の変動費と見なされます。しかし、これらは大家側の経営上の費用であり、入居者が家賃請求で支払う変動費とは明確に区別する必要があります。したがって、契約書に「変動費」の記載がある場合は、その内訳を事前に確認することが不可欠です。
支払い先からの通知で金額が確定

変動費の金額は、その名の通り月ごとに変動するため、支払い先である大家さんや管理会社からの通知によって最終的な請求額が確定します。多くの場合、家賃の支払い日に合わせて、前月分の使用量などに基づいた金額が通知されます。
これは、水道光熱費のように、実際に使われた量が分かるまで正確な金額を算出できないからです。そのため、入居者は毎月の通知を確認して、請求額を把握する必要があります。
通知の形式は、書面で郵送される場合や、家賃の引き落とし明細に記載される場合、あるいはオンラインの入居者専用ページで告知される場合など、物件によって様々です。もし家賃保証会社を利用している場合は、保証会社から届く請求通知書に変動費の内訳が記載されていることもあります。
注意点として、もし通知内容に不明な点があれば、すぐに管理会社や大家さんに問い合わせることが大切です。請求の根拠となる使用量のデータなどを確認させてもらうことで、納得して支払うことができます。万が一、通知が遅れたり届かなかったりする場合でも支払い義務がなくなるわけではないため、おかしいと感じたら自ら連絡を取る姿勢が求められます。
家賃の変動費は毎月変わるのか
はい、家賃に含まれる変動費は、原則として毎月金額が変わる可能性があります。月々の支出が一定ではないため、家計を管理する上ではこの変動をあらかじめ考慮しておくことが求められます。
変動費の金額が変わる主な理由は、水道光熱費のように季節要因で使用量が大きく異なる費用が含まれているためです。例えば、夏場はシャワーの使用回数が増えて水道代が上がり、冬場は給湯でガス代が増えるといった傾向が見られます。
また、入居者のライフスタイルの変化によっても金額は変動します。在宅勤務が増えて日中の電気使用量が増えたり、来客があって水道使用量が増加したりすることも考えられます。これらの個人的な要因が、翌月の請求額に直接反映されることになります。
ただし、全ての物件で毎月必ず大きく変動するわけではありません。変動費の内訳が共用部分の清掃費など、比較的変動の少ない項目のみで構成されている場合は、金額がほぼ一定になることもあります。いずれにしても、変動費は固定費とは異なり、月々の増減があるという認識を持っておくことが大切です。
賃料は固定費か変動費かの違い

賃貸物件にかかる費用を理解する上で、「賃料」そのものと、家賃に含まれることがある「変動費」を区別することは非常に大切です。結論から言うと、部屋を借りる対価である賃料(家賃)は「固定費」に分類されます。
その理由は、賃料が契約によって定められた一定の金額であり、売上や個人の活動量によって月ごとに変わるものではないからです。事業用の物件であっても、たとえ売上がゼロでも支払い義務が生じるため、会計上も固定費(地代家賃)として扱われます。
一方で、変動費は前述の通り、使用量や状況に応じて金額が変わる費用です。両者の違いを理解するために、以下の表に具体例をまとめました。
費用の種類 | 特徴 | 具体例 |
固定費 | 毎月、ほぼ一定額が発生する費用 | 家賃(賃料)、管理費・共益費(定額の場合)、保険料、ローンの返済金 |
変動費 | 使用量や状況に応じて金額が変動する費用 | 水道光熱費(従量制)、通信費(従量制)、修繕費、原状回復費、広告宣伝費 |
このように、賃料は固定費ですが、家賃の請求書には変動費が含まれていることがある、と整理すると分かりやすいでしょう。契約時には、請求される総額のうち、どこまでが固定費で、どの部分が変動費なのかを明確に区別して把握しておくことが、後々の資金計画を立てやすくする鍵となります。
更新料は変動費に含まれるのか

賃貸契約の更新時に支払う「更新料」は、変動費には含まれません。これは、更新料が毎月の状況に応じて金額が変わる費用ではないためです。
更新料は、通常1年や2年といった契約期間の満了時に、契約を継続するための対価として支払う一時的な費用です。その金額は「家賃の1ヶ月分」などと契約書に明確に定められており、使用量などに応じて変動する性質のものではありません。したがって、会計上も家計上も、定期的に発生する特別な支出として扱われます。
しかし、ここで注意が必要なのは、保証会社との契約を更新する際に発生する「保証会社更新料」です。時に、この保証会社の更新料の請求が「変動費」という名目で通知されるケースが、実際の相談事例として見受けられます。ただし、これは一部の管理会社による便宜上の処理であり、一般的には「保証更新料」など本来の費用の名目で明記されるのが通常です。
もし「変動費」として更新料らしき請求が来た場合は、それが何の費用なのかを必ず確認することが大切です。物件の契約更新料なのか、それとも保証会社の更新料なのかによって、支払いの意味合いも異なってきます。いずれにせよ、更新料は月々変動する費用ではない、という点を理解しておくことが重要です。
なぜ家賃そのものが変動するのか

これまで家賃は固定費であると説明してきましたが、契約期間中や更新のタイミングで、家賃そのものの金額が見直されることがあります。これは「変動費」とは異なる文脈での「家賃の変動」です。
家賃が変動する最も大きな理由は、物件の価値や市場の需要と供給のバランスが変化するためです。例えば、以下のような要因が挙げられます。
経済状況の変化
物価や金利が上昇すると、建物の維持管理コストや固定資産税などの大家さんの負担が増加します。この負担を補うために、家賃の値上げが検討されることがあります。
周辺環境の変化と相場変動
近隣に新しい駅や商業施設ができるなどして地域の利便性が向上すると、物件の資産価値が上がり、周辺の家賃相場も上昇します。これに伴い、既存の物件の家賃も見直される可能性があります。
需要と供給のバランス
1月から3月の繁忙期は、引っ越す人が多いため家賃は高めに設定されがちです。逆に、オフシーズンには空室を埋めるために家賃が引き下げられることもあります。
これらの理由から、大家さんは法律(借地借家法)に基づいて家賃の増減を請求する権利を持っています。もちろん、入居者側も、日当たりが悪くなるなど物件の価値が下がった場合には、家賃の減額を交渉することが可能です。家賃の変動は、あくまで双方の合意に基づいて行われるのが原則となります。
家賃の変動費とは違う費用の知識
- 家計の固定費と変動費の違い
- 一人暮らしの固定費と変動費
- 変動費と固定費どちらを減らすべきか
- 家賃の変動費に使う勘定科目
- 家賃保証会社契約書の確認点
- まとめ:家賃の変動費とは何か
家計の固定費と変動費の違い

家計管理においても、支出を「固定費」と「変動費」に分けて考えることは、節約や貯蓄計画を立てる上で非常に有効です。両者の違いを正しく理解することが、家計改善の第一歩となります。
家計における固定費とは、住居費や保険料のように、毎月ほぼ決まった金額が出ていく支出を指します。一度契約を見直さない限り、金額が大きく変わることはありません。
一方、変動費は食費や交際費のように、その月の行動や選択によって支出額が変わるものを指します。日々の心がけで節約しやすい反面、我慢しすぎるとストレスにつながる可能性もある費用です。
両者の違いと具体例を以下の表にまとめました。
費用の種類 | 特徴 | 具体例 |
固定費 | 意思決定に関わらず、毎月一定額が発生する支出 | 家賃、住宅ローン、管理費、通信費(定額プラン)、保険料、サブスクリプションサービス |
変動費 | 日々の行動や選択によって金額が変動する支出 | 食費、日用品費、水道光熱費(従量料金部分)、交際費、娯楽費、交通費、医療費 |
このように支出を分類することで、家計のどこに無駄があるのか、どこから手をつけるべきかが見えやすくなります。特に固定費は一度見直すだけで継続的な節約効果が得られるため、家計改善において重要なポイントと考えられています。
一人暮らしの固定費と変動費

これから一人暮らしを始める方や、現在一人暮らしで家計を見直したい方にとって、自身の支出を固定費と変動費に分けて把握することは不可欠です。計画的にお金を使わなければ、気づかぬうちにお金が足りなくなってしまう可能性があるためです。
一人暮らしの支出で最も大きな割合を占める固定費は、やはり家賃です。収入に対して無理のない家賃の物件を選ぶことが、安定した生活を送るための基盤となります。その他、スマートフォンの通信費やインターネット料金、各種保険料も毎月必ず発生する固定費です。
変動費としては、食費が中心になります。外食が多いと食費はかさみますが、自炊を心がけることで大きく節約できる項目です。また、友人との交際費や趣味に使う娯楽費、衣類や日用品の購入費も変動費に含まれます。これらの費用は、月ごとに予算を決めて計画的に使う習慣をつけることが大切です。
例えば、手取り収入が17万円の場合、家賃を5万円台に抑えられれば、食費や光熱費などの変動費を支払いながら、毎月2万円程度の貯金も可能になるでしょう。自分のライフスタイルに合わせて、固定費と変動費のバランスを考えることが、無理のない一人暮らしの鍵を握ります。
変動費と固定費どちらを減らすべきか
家計や事業のコストを削減しようと考えたとき、「変動費と固定費、どちらから手をつけるべきか」という疑問が生じます。効率的な改善を目指すのであれば、まずは「固定費」の見直しから始めるのが定石です。
その理由は、固定費が一度の行動で継続的な節約効果を生み出すからです。例えば、通信費のプランを安いものに変更したり、不要なサブスクリプションサービスを解約したりすれば、その後は特に努力をしなくても毎月の支出が自動的に減ります。効果が大きく、かつ持続しやすいのが固定費削減のメリットです。
具体的には、以下のような項目から見直すのが効果的です。
- 通信費(格安SIMへの乗り換え、プランの見直し)
- 保険料(保障内容の確認、不要な特約の解約)
- 住居費(より家賃の安い物件への引っ越し、住宅ローンの借り換え)
- 定額制サービス(利用頻度の低いものの解約)
一方で、変動費である食費や交際費の削減は、日々の我慢や努力が必要となり、ストレスの原因になることがあります。もちろん、無駄な外食を減らすなどの意識は大切ですが、過度な節約は生活の質を低下させかねません。
したがって、まずは固定費の削減で家計にゆとりを作り、その上で無理のない範囲で変動費の無駄を省いていく、という順番で取り組むのが最も効果的で長続きしやすい方法と考えられます。
家賃の変動費に使う勘定科目
個人事業主や法人が事業のために事務所や店舗を借りている場合、家賃と共に請求される変動費も経費として計上できます。その際、どの勘定科目を使うかは、変動費の内容によって異なります。
変動費を一つの勘定科目にまとめるのではなく、その性質に応じて適切に仕訳することが、正確な会計処理の基本です。
水道光熱費
変動費の内訳が水道代や電気代、ガス代である場合は、「水道光熱費」という勘定科目を使って処理します。これは最も一般的なケースです。
支払手数料
変動費が、管理会社への特定の業務に対する手数料や、インターネット使用料などである場合は、「支払手数料」や「通信費」といった勘定科目が適切です。
修繕費
建物の小規模な修繕やメンテナンスにかかった費用が変動費として請求された場合は、「修繕費」として計上します。
自宅兼事務所で家賃や変動費を支払っている場合は、家事按分という考え方が必要です。事業で使用している面積や時間などの合理的な基準で、支出全体の中から事業経費にできる部分の割合を計算し、その分だけを経費として計上します。プライベートな部分は「事業主貸」として処理することになります。変動費の内容を明確にし、適切な勘定科目に振り分けることが大切です。
家賃保証会社契約書の確認点

賃貸物件を契約する際、多くの場合で家賃保証会社の利用が求められます。この家賃保証会社の契約書は、物件の賃貸借契約書とは別に交わされる重要な書類であり、変動費に関連する思わぬトラブルを避けるためにも、内容をしっかり確認する必要があります。
最も注意すべき点は、保証料や更新料に関する項目です。保証会社との契約には、初回保証料のほかに、1年または2年ごとに「年間保証料」や「更新保証料」が発生することが一般的です。この更新時の費用が、管理会社からの請求明細で「変動費」として扱われることがあるためです。
契約書を確認する際は、以下のポイントをチェックしましょう。
- 初回保証料の金額と支払いタイミング
- 年間保証料や更新保証料の有無、金額、発生時期
- 保証の範囲(家賃本体だけでなく、変動費や原状回復費用なども保証対象か)
- 滞納した場合の代位弁済の流れと遅延損害金
特に、「支払先からの通知による額」といった曖昧な表現で変動費が記載されている場合、保証会社の更新料が含まれている可能性を念頭に置くべきです。契約内容を十分に理解しないまま署名してしまうと、後から高額な請求に驚くことになりかねません。不明な点は必ず不動産会社に質問し、納得した上で契約を進めることが賢明です。
まとめ:家賃の変動費とは何か
この記事では、賃貸契約における「家賃の変動費」について、その定義から関連する知識まで幅広く解説しました。最後に、本記事の要点をまとめます。
- 「変動費」という項目名は一般的ではなく契約による
- 家賃の変動費とは使用量に応じて金額が変わる費用のこと
- 賃料本体は固定費で変動費とは区別される
- 変動費の主な内訳は実費請求の水道光熱費など
- 金額は支払い先からの通知で毎月確定する
- 季節やライフスタイルの変化で金額は変動する
- 更新料は原則として変動費ではない
- 保証会社の更新料が変動費名目で請求されるケースもある
- 家賃そのものの変動は経済状況や市場相場が理由
- 家計管理では固定費と変動費の分類が有効
- 節約は効果が持続する固定費の見直しからが基本
- 事業経費にする際は変動費の内容に応じた勘-定科目を使う
- 自宅兼事務所の場合は家事按分が必要
- 家賃保証会社の契約書で更新料の有無を確認
- 契約書に不明な点があれば必ず質問する