
こんにちは。賃貸トラブル解決ナビ、運営者の熊坂です。
退去の日が近づいてくると、お部屋のあちこちの汚れが気になってきますよね。特に、毎日使っていたお風呂場の鏡。ふと改めて見てみると、白いウロコのような汚れがびっしりとついていて、スポンジで擦っても全く落ちない。そんな経験はありませんか。実は、賃貸物件の退去立ち会いにおいて、この鏡のウロコ汚れは非常に揉めやすいポイントの一つなんです。「たかが水垢でしょ?」と軽く考えていると、後から予想外のクリーニング費用や、最悪の場合は鏡の交換費用を請求されてしまうこともあります。でも、安心してください。正しい知識を持って対処すれば、傷をつけるリスクを避けながら、費用を最小限に抑えることは十分に可能です。
- 鏡のウロコ汚れが「通常損耗」か「借主負担」になるかの境界線
- 自分で掃除をして逆に鏡を傷つけてしまった場合の対処法
- プロの業者に依頼する場合と交換する場合の費用対効果の比較
- 退去費用を安く抑えるための正しいウロコ取りの手順
賃貸の鏡うろこで退去費用を請求されるケース
「きれいに使っていたつもりなのに、なんでお金を取られるの?」退去時のトラブルで最も多いのが、この認識のズレです。特に浴室の鏡は、毎日水を使う場所だけに汚れやすく、その汚れが頑固になりやすい場所です。まずは、どのようなケースで費用請求が発生するのか、そしてその根拠は何なのかを、法律的なガイドラインと現場のリアルな相場観から紐解いていきましょう。
国交省ガイドラインに見る原状回復の範囲
賃貸物件を退去する際、私たち借主には「原状回復義務」というものがあります。この言葉を聞くと、「入居した時と同じピカピカの状態に戻さなきゃいけないの?」と不安になる方も多いのですが、実はそうではありません。国土交通省が定めている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、明確なルールが記されています。
まず大前提として、普通に生活していて自然に汚れたり古くなったりするものについては、借主が費用を負担する必要はないとされています。これを「通常損耗」や「経年劣化」と呼びます。例えば、日当たりが良い部屋で壁紙が日焼けしてしまった場合や、家具を置いていた床に凹みができた場合などがこれに当たります。家賃には元々こうした修繕費が含まれているという考え方なんですね。
一方で、借主が負担しなければならないのは「故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等」です。少し難しい言葉ですが、要するに「わざと壊した」「うっかりミスで汚した」「掃除をサボりすぎてひどい状態にした」といったケースです。
では、問題の「鏡のウロコ汚れ」はどちらに分類されるのでしょうか。
ここが分かれ目!
軽度な水垢や曇りであれば「通常損耗(貸主負担)」と判断されることが多いですが、鏡が見えなくなるほど白く固着したウロコ汚れは「善管注意義務違反(借主負担)」とされる可能性が高くなります。
なぜなら、お風呂の鏡についた水滴は、毎日お風呂上がりに拭き取っていれば、あそこまで頑固なウロコにはならないからです。「長期間掃除を怠った結果、通常の清掃では除去できないレベルまで汚れを放置した」とみなされると、それはもはや通常損耗の範囲を超えていると判断されてしまうんですね。特に、特殊な洗剤や研磨作業が必要なレベルになると、その費用を請求されるリスクはグッと上がります。
私がこれまでの相談を受けてきた感覚で言うと、「ちょっと曇ってるかな」程度ならセーフですが、「触るとザラザラして、爪で引っかかる」「濡らしてもすぐに白く浮き出てくる」というレベルだと、指摘される覚悟をしておいた方が良いかもしれません。
鏡の交換費用や浴室クリーニングの相場
実際に費用を請求されるとなった場合、どれくらいの金額になるのか。これを知っておかないと、対策にかけるべきコストの判断もできませんよね。あくまで目安ですが、市場の相場を見てみましょう。
まず、軽度のウロコ汚れで、専門業者によるクリーニングで落ちる場合の費用です。通常、退去後のハウスクリーニング費用全体は契約内容によりますが、借主負担の場合、1Kや1LDKで3万円〜5万円程度が一般的です。しかし、頑固なウロコ汚れは通常の清掃メニューに含まれていないことが多く、「特殊清掃」や「オプション作業」として追加料金が発生することがあります。
| 項目 | 相場(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 鏡のウロコ取り(オプション) | 3,000円 〜 5,000円 | 通常の浴室清掃に追加される費用 |
| 浴室クリーニング(全体) | 12,000円 〜 20,000円 | 鏡の表面洗浄は含むが、研磨は別料金の場合が多い |
| 鏡の交換(小サイズ) | 15,000円 〜 25,000円 | 30cm×80cm程度の一般的な縦長ミラー |
| 鏡の交換(ワイドサイズ) | 30,000円 〜 50,000円以上 | 横長の大きな鏡や特殊加工がある場合 |
ここで怖いのが「交換」になってしまうケースです。「汚れがひどすぎて、プロが磨いても落ちない」、あるいは「自分で掃除しようとして傷をつけてしまった」という場合、鏡自体を新品に取り替えることになります。
鏡の交換費用は、鏡のサイズや加工(防湿加工や防曇加工など)によって大きく変わります。最近のデザイナーズマンションなどでよく見かける横長のワイドミラーだと、鏡の代金だけで数万円、そこに既存の鏡を撤去する作業費、新しい鏡を取り付ける施工費、古い鏡の処分費が上乗せされます。トータルで5万円を超える請求が来ることも珍しくありません。
「えっ、たかが鏡一枚で5万円!?」と驚かれるかもしれませんが、鏡はただ壁に貼ってあるだけでなく、裏面の腐食を防ぐための処理や、万が一割れた時に飛散しないような安全対策も必要なので、意外とコストがかかる建材なんですね。また、賃貸の場合は次の入居者のために「新品同様」にする必要があるため、部分的な補修ではなく全面交換が選ばれがちです。
さらに注意が必要なのは、「減価償却」の考え方です。壁紙やカーペットなどは6年住めば価値が1円になるといったルールがありますが、鏡を含む「建物付属設備」は耐用年数が15年〜20年と長く設定されていたり、そもそも消耗品扱いではなく建物の維持管理の一部とみなされたりすることがあります。つまり、長く住んでいたからといって、負担額がゼロになるとは限らないのです。特に「傷をつけた(過失)」場合は、残存価値に関わらず交換工賃の全額負担を求められるケースも多いので注意が必要です。
クエン酸でも落ちないウロコ汚れの原因

「ネットで調べたらクエン酸が良いって書いてあったから試したけど、全然落ちない!」そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。私も最初はそうでした。キッチンペーパーにクエン酸水を染み込ませて、ラップでパックして数時間放置。ワクワクしながらラップを剥がしてみると、そこには変わらぬウロコの姿が…。なぜ、これほどまでに鏡のウロコは頑固なのでしょうか。
実は、鏡につく「ウロコ汚れ」には、大きく分けて2つの種類があるんです。ここを理解していないと、いくら掃除をしても徒労に終わってしまいます。
一つ目は「カルシウム系スケール」です。水道水に含まれるカルシウム分が、空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムになったものです。これはアルカリ性の汚れなので、酸性のクエン酸で中和して溶かすことができます。できたばかりの白い粉っぽい汚れなら、これでするりと落ちます。
問題なのは二つ目、最強の敵である「シリカ系スケール」です。水道水にはシリカ(ケイ素)というミネラルも含まれているのですが、これが鏡の表面で乾いて結晶化すると、非常に厄介なことになります。なぜなら、鏡のガラスの主成分も「二酸化ケイ素」だからです。
どういうことかと言うと、汚れ(シリカ)と鏡(ガラス)が、化学的に非常に似た成分同士であるため、時間が経つにつれて強く結びついてしまうんです。これを化学用語で「重合」と言ったりしますが、イメージとしては、汚れが鏡の表面に乗っているのではなく、汚れと鏡が一体化して「石」になってしまっている状態に近いですね。
このシリカ系スケールは、ガラスと同じくらいの硬さを持っています。しかも、酸にもアルカリにも非常に強く、化学的に溶かそうとするとガラスそのものを溶かすような劇薬(フッ化水素酸など)が必要になってしまいます。当然、そんな危険な薬品は家庭では使えません。
なぜクエン酸で落ちないの?
クエン酸が効くのは「カルシウム汚れ」だけだからです。何年も放置してガラスと一体化してしまった「シリカ汚れ」には、残念ながらクエン酸などのマイルドな酸はほとんど効果がありません。
つまり、クエン酸パックをしてもビクともしないウロコ汚れは、すでにシリカ化して鏡と一体化している可能性が高いのです。こうなると、化学的な洗浄(溶かすこと)は諦めて、物理的な研磨(削り落とすこと)に切り替えるしかありません。しかし、そこには「鏡に傷をつける」という大きなリスクが潜んでいるのです。
激落ちくんで鏡を擦ると傷つくリスク

掃除の万能選手として知られる「激落ちくん」などのメラミンスポンジ。「とりあえずこれで擦ればなんとかなるでしょ」と、お風呂の鏡にも使っていませんか?実はこれ、賃貸の鏡においてはかなりリスキーな行為なんです。
メラミンスポンジは、メラミン樹脂という非常に硬い樹脂をミクロン単位の泡状にしたものです。その硬い骨格で汚れを物理的に削り取る、いわば「超微細なヤスリ」のようなものです。確かに、洗面台の陶器や蛇口のステンレスには絶大な効果を発揮します。
しかし、鏡(ガラス)に対しては注意が必要です。純粋なガラスであれば、メラミン樹脂よりも硬度が高いので、理論上は傷つきにくいとされています。ですが、現実の掃除シーンではそう単純ではありません。
まず、鏡の表面に砂埃や硬い異物が付着していた場合、スポンジでそれを引きずってしまい、深い線傷(スクラッチ)を入れてしまうことがあります。また、力任せに擦り続けることで、目には見えないレベルの微細な傷が無数に入り、鏡全体が白く曇ったようになってしまうこともあります。こうなると、光が乱反射して余計に汚れが目立つようになってしまいます。
そして何より危険なのが、「曇り止め加工(防曇コーティング)」や「親水コーティング」が施されている鏡の場合です。最近の賃貸物件、特に築浅のマンションなどでは、機能性を高めるために鏡の表面に特殊なフィルムやコーティング層が設けられていることが増えています。
このコーティング層は、ガラスそのものよりも遥かに柔らかくデリケートです。ここにメラミンスポンジや硬いタワシを使ってしまうと、コーティングがいとも簡単に剥がれてしまいます。しかも、綺麗に全部剥がれるのではなく、まだら状に剥げてしまうため、鏡を見た時に「なんか変な模様ができている」「一部だけ水弾きが違う」という悲惨な状態になります。
コーティング剥がれは「破損」扱いです
ウロコを取ろうとしてコーティングを剥がしてしまった場合、それは汚れではなく「設備の破損」とみなされます。当然、原状回復費用(鏡の交換費用)は借主の全額負担となる可能性が極めて高いです。「良かれと思って掃除したのに、逆に高くついた」という一番避けたいパターンですね。
ご自宅の鏡にコーティングがされているかどうかは、見た目では判断しにくいこともあります。入居時の設備説明書を確認するか、水をかけた時に水滴にならずに膜のように広がるか(親水性)などで判断する必要がありますが、分からない場合は「安易に擦らない」のが鉄則です。
鏡の裏のシケや腐食は誰の負担になるか
鏡のトラブルは、表面のウロコ汚れだけではありません。鏡をよく見ると、縁(フチ)の部分や真ん中あたりに、黒っぽいシミのようなものが出ていることはありませんか?これは汚れではなく、「シケ(腐食)」と呼ばれる現象です。
鏡は、透明なガラスの裏側に銀膜や銅膜をメッキし、その上から保護塗料を塗って作られています。この裏側の金属膜が、湿気や洗剤の成分、あるいは経年劣化によって酸化し、黒く変色してしまうのがシケの正体です。
ここで重要なのは、「シケは表面の汚れではないので、掃除では絶対に落ちない」ということです。ガラスの裏側で起きている化学変化なので、表面をいくら磨いても無意味です。直すには鏡を交換するしかありません。
では、この交換費用は誰が負担するのでしょうか。結論から言うと、基本的には「貸主(オーナー)負担」となるケースがほとんどです。
なぜなら、シケは鏡の構造上の問題や、浴室という湿気の多い環境による自然な劣化(経年劣化)とみなされるからです。入居者が普通にお風呂に入り、普通に掃除をしていただけで発生したシケに対して、修繕費用を請求されるいわれはありません。
ただし、例外もあります。例えば、「鏡の縁にカビ取り剤(塩素系漂白剤)を頻繁にかけ続け、洗い流さずに放置した」といった場合です。漂白剤の強力な成分が鏡の裏側に回り込み、腐食を急激に進行させたと判断されれば、善管注意義務違反を問われる可能性もゼロではありません。とはいえ、それを証明するのは難しいため、通常は経年劣化として処理されることが多いでしょう。
退去の立ち会い時に、もし管理会社の担当者がこの黒いシミを指差して「これも汚れですね、クリーニング代がかかります」と言ってきたら、自信を持ってこう答えてください。「これは汚れではなく、鏡の裏側の腐食(シケ)ですよね?表面はツルツルしていますし、経年劣化ではないですか?」と。知識があることを示せば、不当な請求を回避できるはずです。
自分で掃除して鏡に傷がついた場合の対処
「ウロコを落とそうと必死にダイヤモンドパッドで擦っていたら、乾いた瞬間に細かい傷が無数に入っていることに気づいた…」
これはDIY掃除で最も背筋が凍る瞬間です。やってしまったものは仕方ありませんが、この後どう振る舞うのが正解なのでしょうか。
まず、絶対にやってはいけないのは「黙って退去すること」や「シールなどを貼って誤魔化すこと」です。退去時の点検を行うのはプロの業者や経験豊富な管理会社のスタッフです。光の加減で浮き上がる傷を見逃すことはまずありませんし、不自然な隠し跡があれば徹底的に調べられます。後から発覚した場合、心証が悪くなり、交渉の余地なく満額請求されることにもなりかねません。
傷の程度が浅ければ、専門のガラス研磨業者(リペア業者)に依頼することで、交換せずに修復できる可能性があります。これを「ガラス再生研磨」と言います。費用は1万5千円〜2万円程度かかりますが、鏡を交換するよりは安く済む場合があります。ただし、これは大家さんや管理会社の許可なく勝手に行うとトラブルの元になるので、微妙なところです。
現実的な対処法としては、退去立ち会いの際に正直に申告することです。「掃除を頑張ったのですが、どうしてもウロコが落ちなくて、少し傷をつけてしまったかもしれません」と伝えます。ここでのポイントは、あくまで「善管注意義務(掃除する義務)」を果たそうとした結果であることをアピールすることです。
場合によっては、「これくらいなら生活傷(通常損耗)の範囲で大丈夫ですよ」と言ってもらえるかもしれませんし、交換が必要になったとしても、正直に話すことで、減価償却(入居年数に応じた負担割合の軽減)をしっかり考慮してもらうよう交渉しやすくなります。
また、ご自身が加入している「火災保険(借家人賠償責任保険)」を確認してみてください。通常、掃除中の過失による破損は免責(対象外)となることが多いですが、契約内容や特約(不測かつ突発的な事故など)によっては、保険が適用できる可能性が残されているかもしれません。諦める前に保険代理店に「掃除中に誤って鏡を傷つけてしまったのですが…」と相談してみる価値はあります。
賃貸の鏡うろこを除去し退去費用を抑える方法
ここまで怖い話ばかりしてしまいましたが、諦めるのはまだ早いです!退去までにまだ時間があるなら、正しい手順でウロコを除去し、きれいな状態で部屋を明け渡すチャンスは残されています。ここでは、リスクを最小限に抑えつつ、最大限の効果を発揮する「プロ直伝」に近いウロコ取りメソッドをご紹介します。お金をかけて交換する前に、まずはこの手順を試してみてください。
鏡のウロコ取り最強の道具と使用手順

ウロコ取りの基本戦略は、「化学の力で溶かす」→「ダメなら物理の力で削る」の2段構えです。いきなり削るのはリスクが高いので、まずは安全な化学洗浄から始めましょう。
ステップ1:酸性パックでカルシウムを溶かす
先ほど「シリカ汚れには効かない」と言いましたが、ウロコ汚れはカルシウムとシリカが混ざり合って層になっていることが多いです。まずは表層のカルシウム分だけでも溶かしてあげることで、汚れ全体を脆く崩れやすくすることができます。
用意するもの
- クエン酸(粉末タイプ)または酸性洗剤(サンポールなどの強力な酸性洗剤は金具を腐食させるので、鏡用のものがベスト)
- 水(クエン酸を溶かす用)
- スプレーボトル
- キッチンペーパー
- 食品用ラップ
手順は以下の通りです。
- クエン酸水を作る:水200mlに対してクエン酸小さじ1〜2杯を溶かします。濃いめの方が効きます。
- たっぷりスプレーする:鏡全体にクエン酸水を吹き付けます。
- ペーパーとラップで密閉:キッチンペーパーを貼り付け、その上からさらにクエン酸水をスプレーし、最後にラップで隙間なく覆います。これを「湿布法」と呼びます。洗剤が乾くのを防ぎ、反応時間を稼ぐための最重要工程です。
- 時間を置く:汚れの程度によりますが、1時間〜2時間ほど放置します。(※長時間放置しすぎると、酸が垂れて鏡を固定している金具(ミラーマットやツメ)を錆びさせたり、浴室カウンター(特に大理石などの天然石)を変色させたりする恐れがあるので、養生テープなどで周りを保護しておくと安心です。)
- 洗い流して擦る:ラップとペーパーを剥がし、その丸めたラップで円を描くように優しく擦ります。最後に水でよく洗い流し、水分を完全に拭き取って確認します。
これで落ちればラッキー!退去費用は0円です。もし、白く浮き上がる輪郭がまだ残っているなら、それは頑固なシリカ汚れです。次のステップへ進みましょう。
ダイヤモンドパッドで傷をつけない研磨法
化学洗浄で落ちなかった汚れは、物理的に削り落とすしかありません。ここで登場するのが「ダイヤモンドパッド(人工ダイヤモンド配合スポンジ)」です。100円ショップでも売られていますが、品質のばらつき(粒子の大きさなど)を考えると、ホームセンターで売られている1,000円〜2,000円程度の「鏡用」と明記された製品を選ぶことを強くおすすめします。数百円をケチって数万円の弁償になるのは割に合いませんからね。
絶対に守るべき3つの鉄則
- 常に水を流しながら作業する これが最も重要です。乾いた状態で擦ると、削り取った汚れやダイヤモンド粒子が直接ガラスに食い込み、致命的な傷を作ります。水は潤滑剤の役割を果たします。シャワーで水をかけ続けるか、スプレーで常に濡れた状態をキープしてください。
- 力を入れずに「滑らせる」 ゴシゴシと親指に力を込めるのはNGです。パッドを鏡に密着させ、軽く支える程度の力で、縦・横・縦・横と一定方向に動かします。円を描くと磨きムラができやすいです。
- 音を聞く 最初は「ジャリジャリ」という音がします。これは汚れを削っている音です。同じ場所を磨いていると、ふっと音が消えて「スルスル」という感触に変わります。これが「汚れが落ちてガラス面に到達した」合図です。これ以上擦る必要はありません。
警告:使ってはいけない鏡
前述の通り、曇り止め加工・親水コーティングなどの特殊加工がされた鏡には、ダイヤモンドパッドは絶対に使用禁止です。コーティングが剥がれて修復不可能になります。必ず事前に説明書等で確認してください。分からない場合は、鏡の隅っこ(目立たない場所)で少しだけ試してみて、変色や傷がつかないか確認してから全体に進んでください。
ダスキン等の業者に依頼する料金と効果

「自分でやるのは傷つけそうで怖い」「道具を揃えるのも面倒だし、時間がない」という方は、プロのハウスクリーニング業者に頼むのが一番賢い選択肢かもしれません。特に退去直前の忙しい時期に、慣れない掃除でストレスを溜めるよりは、お金で解決するのも一つの手です。
大手のダスキンやおそうじ本舗、あるいはくらしのマーケットなどで探せる個人のクリーニング業者など、多くの業者が浴室クリーニングのオプションとして「鏡のウロコ取り」を提供しています。
プロに頼むメリット(損益分岐点)
例えば、ウロコ取り単体の依頼で5,000円〜8,000円(出張費込み)かかるとします。自分で道具(クエン酸、ダイヤモンドパッド、コーティング剤など)を揃えると2,000円〜3,000円はかかります。その差額は数千円です。
この数千円で得られるのは以下の価値です。
- 確実な成果:プロ専用の機材(ポリッシャー)と薬剤を使うので、DIYでは歯が立たない汚れもピカピカにしてくれます。
- 安全の保証:万が一、作業中に鏡が割れたり傷ついたりしても、まともな業者なら損害賠償保険に入っているため、弁償してもらえます(DIYなら自己責任)。
- 時間の節約:1時間も2時間も汗だくになって擦る必要がありません。
特に「退去費用の請求が怖い」という心理的な不安を解消できる点を考えれば、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。退去立ち会いの前にプロに入れてもらい、「これなら文句ないでしょう」という状態にしておくのは、非常に有効な自衛策です。
賃貸でお風呂の鏡を勝手に交換する危険性
「掃除業者に頼むくらいなら、Amazonで新しい鏡を買って自分で付け替えた方が安くない?」と考えるDIY上級者の方もいるかもしれません。確かに、鏡自体はネットで数千円で買えます。しかし、賃貸物件においてこれを独断で行うのは、非常に危険な賭けです。
まず、契約上の問題です。賃貸借契約書には通常「造作の変更の禁止」や「模様替えの制限」といった条項があります。オーナーの許可なく設備を交換することは契約違反になります。
次に、施工リスクです。浴室の鏡は、通常「ミラーマット(強力な両面テープ)」と「変成シリコーン接着剤」で壁にガッチリ固定されています。これを取り外すには、ピアノ線などを裏側に通して接着剤を切断していくのですが、素人がやると高確率で浴室の壁面パネルを傷つけたり、凹ませたりします。
もし壁面パネルを破損させてしまった場合、その補修費用は鏡の交換費用の比ではありません。パネル交換となれば10万円〜20万円コースです。さらに、新しく取り付けた鏡のサイズが微妙に違ったり、防湿処理が甘くてすぐにシケが出たりと、トラブルの種は尽きません。
退去時に「勝手に違う鏡に変わっている」ことが発覚すれば、「原状回復(元の鏡に戻すこと)」を求められ、結局は正規の交換費用を請求されることになります。「黙って交換すればバレない」と思っても、品番や仕様の違いでプロにはすぐに分かってしまいます。リスクが高すぎるので、勝手な交換は絶対にやめましょう。
鏡の傷は補修不可?交換が必要なケース
どれだけ頑張っても、以下の状態になっている場合は、清掃(クリーニング)での回復は不可能です。「交換」が必要となるため、退去費用の負担を覚悟するか、管理会社への相談が必要になります。
- 深い傷(スクラッチ)がある 爪が引っかかるような深い傷は、研磨しても消えません。光の乱反射で白く見えてしまいます。
- シケ(腐食)が出ている 前述の通り、鏡の内部からの腐食は直せません。ただし、これは貸主負担になる可能性が高いので、正直に指摘しましょう。
- エッチング(化学的な浸食)が起きている ウロコ汚れを何年も放置すると、アルカリ成分がガラスを侵食し、表面にクレーター状の凹みを作ることがあります。こうなると、汚れを落としても表面は凸凹のままで、元通りにはなりません。
- コーティングの剥離 防曇フィルムなどがまだらに剥がれている状態。再コーティングは工場レベルの加工が必要なため、現場では修復できません。
これらの状態であれば、無駄な抵抗(掃除)はやめて、潔く管理会社に「鏡の状態が悪いので確認してほしい」と連絡する方が賢明です。入居期間が長ければ減価償却で安く済むかもしれませんし、シケなら無料かもしれません。一番悪いのは、傷を隠そうとして上から何か塗ったりして、状況を複雑にすることです。
賃貸の鏡うろこを解決し退去費用を抑える手順
最後に、ここまでのお話をまとめて、あなたが今取るべき行動をステップ形式で整理しました。この手順に沿って進めれば、無駄な出費を最小限に抑えられるはずです。
退去費用回避フローチャート
- STEP 1:現状確認 その汚れは表面の「ウロコ」ですか?裏面の「シケ」ですか? → シケなら掃除不要。退去時に「経年劣化」と主張しましょう。 → ウロコならSTEP 2へ。
- STEP 2:酸性パック(安全策) クエン酸水とラップで1〜2時間パック。 → これで落ちれば解決!費用は数百円。 → 落ちなければSTEP 3へ。
- STEP 3:特殊加工の確認 鏡に曇り止め加工などがされていませんか? → 加工ありなら、自分で削るのはNG。STEP 5(業者相談)へ。 → 加工なしの普通のガラス鏡ならSTEP 4へ。
- STEP 4:ダイヤモンドパッド(部分テスト) ホームセンターの鏡用パッドを購入。隅っこで傷がつかないかテストしてから、水をかけながら優しく研磨。 → 落ちれば解決!費用は2,000円程度。 → 傷がつきそう、または落ちないならSTEP 5へ。
- STEP 5:プロへの依頼または管理会社へ相談 無理に続けて傷をつける前にストップ。 → 時間があるならハウスクリーニング業者(5,000円〜)に依頼。 → そのまま退去する場合は、正直に申告し、ガイドラインや減価償却に基づいた適正な精算を求める。
賃貸の鏡トラブルは、知識があるかないかで最終的な支払額が大きく変わります。「知らない間に傷つけて高額請求」という最悪のパターンだけは避けて、賢く対処してくださいね。この記事が、あなたの円満な退去と新生活のスタートの一助になれば幸いです。