
こんにちは。賃貸トラブル解決ナビ、運営者の熊坂です。
進学や転勤が決まり、良い物件を押さえるために早めに契約をしたものの、実際に入居するのは数週間先、あるいは数ヶ月先になることってありますよね。また、実家と行き来する二拠点生活を始めるために部屋を借りたけれど、月の半分以上は空室になるという方もいらっしゃるでしょう。「せっかくの新居だし、誰も住んでいないなら綺麗なままでしょ?」と思いがちですが、実は人が住んでいない家というのは、想像以上に早く傷んでしまうものなのです。
さらに、誰も住んでいない期間の家賃はどうなるのか、住民票はいつ移せばいいのか、水道光熱費の契約はどうすべきかなど、手続き面でも多くの疑問が湧いてくるはずです。特に、湿気がこもってカビだらけになったり、排水口から強烈な下水の臭いが上がってきたりといったトラブルは、入居初日のワクワクを一瞬で絶望に変えてしまいます。私自身も不動産業界に長くいますが、「入居しようとしたら虫の死骸だらけだった」という相談を受けることは珍しくありません。
この記事では、賃貸契約後にしばらく住まないという選択をしたあなたが、無駄な出費を抑えつつ、お部屋を最高の状態で維持するために知っておくべき知識を全て網羅しました。管理会社への連絡義務や火災保険の落とし穴など、意外と知られていない法的リスクについても分かりやすく解説しますので、ぜひ最後まで目を通してくださいね。
- 長期間空室にする際に発生するカビや虫、悪臭などの物理的リスクと具体的な対策
- 水道光熱費の契約タイミングや、冬場の凍結を防ぐための必須メンテナンス
- 住民票の異動時期に関する「14日ルール」の正しい解釈と行政手続きの注意点
- 無駄な家賃を抑えるための交渉術や、火災保険の適用条件に関する重要知識
賃貸契約後にしばらく住まない場合の物理的リスクと管理
「賃貸契約後、しばらく住まない期間がある」という場合、まず頭に浮かぶのは家賃のことかもしれません。しかし、プロとして声を大にしてお伝えしたいのは、建物の「物理的な劣化」についてです。皮肉なことに、日本の住宅は「人が住んで初めて機能する」ように設計されています。換気扇を回し、水を流し、人が歩くことで空気が動く。このサイクルが止まった瞬間から、部屋は急速に老化を始めます。ここでは、入居までの空白期間にあなたのお部屋で何が起きるのか、そしてそれをどう防ぐべきかを解説します。
排水トラップの封水切れによる悪臭と害虫の侵入
想像してみてください。久しぶりに新居のドアを開けた瞬間、鼻を突くような下水の臭いが部屋中に充満していたら…。これは脅しではなく、実際に頻繁に起こるトラブルの一つ、「封水切れ(ふうすいぎれ)」によるものです。
皆さんは、洗面台の下やトイレの配管がS字やU字に曲がっているのを見たことがありますか?あの曲がった部分には常に水が溜まるようになっており、これを「封水(トラップ)」と呼びます。この水は、下水道から上がってくる悪臭や、ゴキブリ・ハエなどの害虫をブロックする「水の蓋」の役割を果たしている非常に重要な存在です。
しかし、契約後にしばらく住まないでいると、この水が蒸発してなくなってしまいます。特に夏場であれば、わずか2週間程度で蒸発しきってしまうことも珍しくありません。封水がなくなると、下水道と部屋が直結した状態になり、そこから悪臭が逆流し、害虫が我が物顔で室内に侵入してくるのです。
封水切れを防ぐための対策
最も確実な対策は、定期的に部屋を訪れて水を流すことです。キッチン、洗面所、お風呂、洗濯機置き場、そしてトイレ。家中のあらゆる排水口にコップ2杯程度の水を流すだけで、封水は復活します。
もし頻繁に行けない場合は、蒸発を防ぐための特殊な薬剤(蒸発防止剤)を使用するのも一つの手です。これは水面に油膜のような膜を張り、長期間にわたって蒸発を防いでくれる優れものです。ホームセンターやネット通販で入手可能なので、長期不在が決まっているなら入居前に投入しておくことを強くお勧めします。
カビや虫の発生を防ぐための換気と除湿剤の活用
最近の賃貸マンションやアパートは、気密性が非常に高く作られています。これは冷暖房効率が良いというメリットがある反面、一度湿気がこもると逃げ場がないというデメリットも抱えています。
人が住んでいれば、ドアの開け閉めや換気扇の使用で空気は循環しますが、誰もいない密室では空気が完全に停滞します。特に注意が必要なのは、北側の部屋、クローゼット、押し入れ、そして浴室です。日本の夏は高温多湿ですから、締め切った室内はカビにとって天国のような環境になります。「新築だから大丈夫」は間違いです。コンクリートが完全に乾ききっていない新築物件ほど、むしろ湿気がこもりやすい傾向さえあるのです。
カビが発生する条件は「温度」「湿度」「栄養分(ホコリなど)」の3つです。しばらく住まない間に部屋がホコリっぽくなると、それがカビの餌になります。入居前にハウスクリーニング済みであっても、空気中に漂う微細なホコリは床に積もります。
24時間換気システムは止めないで!
最近の物件には「24時間換気システム」がついていますが、電気代がもったいないからとブレーカーを落としてしまう方がいます。これは絶対にNGです。壁の給気口を開け、24時間換気は常にオンにしておくことが、カビを防ぐ最低限の防衛ラインです。
対策としては、クローゼットや靴箱の扉をすべて開け放っておくこと。そして、部屋の各所に「置き型の大容量除湿剤」を設置してください。水が溜まるタイプのものであれば、どれくらい湿気を吸ったか視覚的に分かるので管理もしやすいですね。可能であれば、晴れた日に空気の入れ替えに行くのがベストですが、難しい場合は除湿剤と換気扇の常時稼働で乗り切りましょう。
水道光熱費の契約判断と冬場の凍結防止の水抜き
「まだ住まないんだから、電気・ガス・水道の契約は入居直前でいいですよね?」という質問をよくいただきます。結論から言うと、電気と水道は契約開始日から使えるようにしておくのがベターです。
理由は先ほどお伝えした通りです。換気扇を回すために電気が必要ですし、封水切れを防ぐために水を流す必要があるからです。基本料金はかかってしまいますが、カビだらけになった部屋のクリーニング代や、染み付いた下水臭を取る手間を考えれば、安い保険料だと言えます。一方で、ガスに関しては給湯やお風呂沸かしに使いますので、実際に住み始める(お湯を使う)タイミングでの開栓で問題ないケースが多いでしょう。
【超重要】冬場の寒冷地における「水抜き」リスク
もしあなたが北海道や東北、あるいは比較的温暖な地域でも山間部などで冬場に契約し、しばらく住まない場合は、水道管の「凍結破裂」に命を懸けて注意してください。水を使わずに放置すると、配管の中の水が凍って膨張し、水道管を破裂させます。こうなると、階下の部屋まで水浸しになり、数百万円規模の損害賠償を請求される可能性があります。
寒冷地では、長期間水道を使わない場合、必ず「水抜き(水落とし)」という作業を行う必要があります。これは専門的な知識が必要な場合もあるので、管理会社に「しばらく住まないので、水抜きが必要か、あるいは凍結防止ヒーターの電源を入れておくべきか」を必ず確認してください。この確認を怠ったがために発生した事故は、借主であるあなたの「善管注意義務違反」となり、保険が下りない可能性すらあります。
郵便物の管理とカーテン設置による空き巣防犯対策

物理的な劣化と同じくらい怖いのが、防犯上のリスクです。ポストにチラシや郵便物が溢れかえっている部屋は、「現在、長期間留守にしています」と泥棒に宣伝しているようなものです。空き巣は、犯行前に必ず下見をします。その際、ポストの状態は真っ先にチェックされるポイントなのです。
また、カーテンがかかっていない窓もリスクが高いです。外から見て、家具もなくガランとした部屋が丸見えだと、やはり「空室である」ことが一目瞭然です。夜になっても明かりがつかない日が何日も続けば、不審者に目をつけられ、勝手に侵入されて寝泊まりされたり、犯罪の拠点として使われたりする…なんていうドラマのような話も、残念ながら現実には起きています。
対策としては、まず入居前であっても安物のカーテンでいいので取り付けておくことです。これだけで、外からの視線を遮り、人が住んでいるかもしれないという気配を演出できます。
郵便物の転送・停止手続きを活用しよう
まだ住民票を移していない段階であれば、郵便局に「転居届」を出すわけにはいきませんよね。その場合は、管轄の郵便局に相談するか、ポストの投入口をテープで塞ぎ「投函禁止」の張り紙をするなどの対策が必要です。ただし、管理会社からの重要書類が届く可能性もあるので、管理会社には「郵便物は実家(または現住所)に送ってください」と伝えておくのが最も安全です。
1ヶ月以上の長期不在時に必須となる管理会社への連絡
意外と見落としがちなのが、契約書に記載されている「長期不在時の通知義務」です。一般的な賃貸借契約書には、「乙(借主)は、本物件を1ヶ月以上不在にする場合、あらかじめ甲(貸主)または管理会社に通知しなければならない」といった条項が含まれていることがほとんどです。
なぜこのような決まりがあるかご存知でしょうか?連絡なしに長期間連絡がつかず、電気や水道のメーターも動いていないとなると、管理会社は「夜逃げ」や「室内での孤独死・事件」を疑わざるを得なくなります。最悪の場合、安否確認のために警察立会いのもとで鍵を強制解錠して室内に入られる…なんていう事態にもなりかねません。
「しばらく住まない」ことが確定しているなら、契約時、または鍵の引き渡し時に担当者にその旨を伝えておきましょう。「仕事の都合で入居は2ヶ月後になりますが、週末だけ空気の入れ替えに来ます」と一言伝えておくだけで、管理会社も安心しますし、不要なトラブルを回避できます。
巡回管理で通水や空気の入れ替えを行う推奨頻度
ここまで様々なリスクと対策をお話ししてきましたが、「じゃあ、具体的にどれくらいの頻度で通えばいいの?」という疑問にお答えします。
理想を言えば、週に1回です。しかし、遠方であったり仕事が忙しかったりと、現実的には難しい場合も多いでしょう。プロの視点から言えば、ギリギリの許容範囲は月に1回です。1ヶ月に一度訪問できれば、封水が完全に蒸発する前に水を足せますし、溜まった郵便物を回収することもできます。
| 作業項目 | 内容とポイント |
|---|---|
| 通水(全ての蛇口) | キッチン、洗面、お風呂で水を2〜3分出しっぱなしにする。トイレも2回ほど流す。 |
| 全室換気 | 窓を全開にし、クローゼットや靴箱も開けて、最低30分は風を通す。 |
| 簡易清掃 | 床に落ちているホコリをクイックルワイパー等で拭き取る(虫の餌をなくす)。 |
| ポスト確認 | チラシを全て廃棄し、溢れないようにする。 |
もし、どうしても自分で行くことができない場合は、家事代行サービスや、管理会社に相談して「空室管理サービス(有料)」を利用するのも賢い選択です。数千円の出費で、カビや悪臭のリスクを回避できるなら安いものだと考えてください。
賃貸契約後にしばらく住まない時の家賃や住民票の手続き
物理的な管理の次は、お金と法律の話です。「住んでいないのに家賃を払うのはもったいない」「住民票はどうすればいいの?」という切実な悩みについて、不動産実務と法律の両面からクリアにしていきましょう。ここを曖昧にしておくと、過料(罰金のようなもの)を取られたり、無駄なお金を払い続けたりすることになりかねません。
家賃発生日と入居日の違いによる二重家賃の負担
まず大前提として、家賃は「実際に住み始めた日(引越し日)」から発生するのではなく、契約で定めた「契約開始日(賃料発生日)」から発生します。あなたが鍵を受け取ったその日から、たとえ布団を持ち込んでいなくても、家賃という時計の針は動き出しています。
転勤や入学シーズンなど、物件の動きが早い時期には、「4月から住みたいけれど、今のうちに契約しておかないと部屋がなくなってしまう」という理由で、1月や2月に契約を済ませる方がいます。この場合、1月〜3月の間は「住んでいないのに家賃を払う」状態になります。さらに、今住んでいる家の家賃と、新しい家の家賃が重複する「二重家賃」が発生し、経済的な負担は大きくなります。
これを防ぐための交渉テクニックとして有効なのが「フリーレント(家賃無料期間)」の相談です。「契約はすぐにしますが、入居は来月からなので、最初の1ヶ月分だけ家賃を無料にしてもらえませんか?」と交渉するのです。特に閑散期(夏場など)であれば、大家さんも空室期間が続くよりはマシだと考えて応じてくれる可能性があります。
契約締結後の交渉は不可能
重要なのは、この交渉は「申し込み段階」で行う必要があるということです。契約書にハンコを押してしまった後に「やっぱり住まないので家賃を負けて」と言っても、100%通りません。契約とはそれほど重い約束なのです。
住民票を移すタイミングと14日ルールの法的解釈
「しばらく住まない場合、住民票はいつ移すべき?」というのは非常に多い質問です。結論から申し上げますと、住民票は「実際に住み始めてから」移すのが正解です。
住民基本台帳法という法律では、「転入をした日から14日以内に届け出なければならない」と定められています。ここで言う「転入をした日」とは、新しい住所での生活を開始した日(引越しをして寝泊まりを始めた日)を指します。「契約日」や「鍵をもらった日」ではありません。
したがって、契約をして鍵を持っていても、まだ生活の拠点が前の家にあるのであれば、住民票を移す必要はありません。むしろ、住んでいない場所に住民票を移すことは「虚偽の届出」となり、法律上問題があります。
14日を過ぎるとどうなる?
実際に住み始めたにもかかわらず、忙しいからといって住民票を移さずに放置し、正当な理由なく14日を過ぎてしまうと、最大で5万円以下の「過料」という罰金を科せられる可能性があります。役所の窓口で「引越し日はいつですか?」と聞かれた際に、正直に1ヶ月前の日付を言ったら叱られた…という話はよく聞きます。「住み始めたら速やかに手続き」を徹底しましょう。
郵便局への転送届や不在届を活用した郵便物対策

前の章でも触れましたが、郵便物の管理は非常に重要です。住民票を移す前であれば、基本的には旧住所に郵便物が届きますが、クレジットカードの更新カードや行政からの重要書類など、手違いで新住所宛に送られてくる可能性もゼロではありません。
そこでおすすめなのが、郵便局の「不在届」というサービスです。これは、旅行や帰省などで長期間家を空ける際に、最長30日間、郵便局で郵便物を預かってくれる(配達をストップしてくれる)システムです。これを提出しておけば、新居のポストが溢れる心配はありません。期間終了後にまとめて配達してくれます。
また、本格的に引越しをした後は、旧住所宛の郵便物を新住所に転送してもらう「転居届」を忘れずに出しましょう。この手続きはネット(e-転居)でも簡単にできます。転送期間は1年間有効です。
火災保険の空室条項と告知義務違反のリスク回避
賃貸契約時に必ず加入する「火災保険(家財保険)」。実はここにも落とし穴があります。保険の約款(契約のルールブック)をよく読むと、多くの場合「30日以上連続して不在にする場合は、通知しなければならない」といった条項が含まれています。
もし、あなたが保険会社に黙って長期間空室にし、その間に誰もいない部屋で漏水事故やボヤ騒ぎが起きたとしましょう。保険会社は「契約時の条件(人が住んで管理している状態)と違うリスクが生じていたのに、報告がなかった」として、告知義務違反を理由に保険金を支払わない可能性があるのです。
「住んでいないから事故なんて起きない」と思うのは危険です。給水管の破裂や、隣室からの類焼など、不在時特有のリスクや、自分が加害者でなくても巻き込まれるリスクは常にあります。しばらく住まないことが分かっているなら、契約代理店や保険会社に電話一本入れて、「入居が○月からになりますが、補償は有効ですか?」と確認し、記録を残しておくことが賢明です。
契約違反となる無断転貸や民泊利用の禁止事項
最後に、絶対にやってはいけないタブーについてお話しします。「自分は住まないから、その間だけ友達に貸して家賃を浮かせよう」とか「空いている期間だけAirbnb(民泊)で旅行者に貸そう」と考える方が稀にいますが、これは即刻契約解除レベルの重大な契約違反です。
日本の民法では、大家さんの承諾なしに借家権を譲渡したり、転貸(また貸し)したりすることを禁止しています。たとえ金銭のやり取りがなかったとしても、契約者以外の人間を勝手に住まわせることは「無断転貸」とみなされ、信頼関係の破壊を理由に追い出されても文句は言えません。
「バレなきゃ大丈夫」は大間違いです。管理会社や近隣住民は、入居者の顔を意外と見ているものです。見知らぬ人が出入りしていればすぐに通報されますし、万が一その「また貸し」した相手が火事などのトラブルを起こせば、契約者であるあなたが全責任を負うことになります。どんなに家賃がもったいなくても、契約者以外を住まわせることは絶対に避けてください。
賃貸契約後しばらく住まない人が注意すべき点まとめ
賃貸契約後しばらく住まない人が注意すべき点まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。「ただ住まないだけなのに、こんなにやることがあるの?」と驚かれたかもしれませんね。
しかし、賃貸契約において「鍵を受け取る」ということは、その部屋の管理者になるということです。法的には「善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)」が発生し、自分の持ち物以上に大切に扱う責任が生まれます。
- 週1〜月1回の換気と通水で、部屋の劣化と悪臭を防ぐ。
- 住民票は実際に住み始めてから14日以内に移す(嘘の届出はNG)。
- 管理会社と保険会社への連絡を怠らず、万が一のトラブルに備える。
- 防犯対策(カーテン、郵便物管理)を徹底し、空き巣に狙われないようにする。
この4点を守れば、入居までの空白期間を安全に乗り切ることができます。「しばらく住まない」という選択は、準備期間を長く取れるというメリットでもあります。この記事で得た知識を武器に、計画的で賢い賃貸ライフをスタートさせてくださいね。あなたが笑顔で新生活を迎えられることを、心から応援しています!