
賃貸物件を探すとき、誰もが気になるのが初期費用。その中でも「敷金・礼金ゼロ」という条件は、とても魅力的に映りますよね。
しかし同時に、「なぜ敷金や礼金がかからないのだろう?」「実は怪しい物件なのでは?」と、不安や疑問を抱く方も多いはずです。
そもそも敷金や礼金にはどんな意味があるのか、敷金なし物件では退去時にどんなリスクがあるのか、礼金がないのは本当にお得なのか――。初めての賃貸探しでは分かりづらい点がたくさんあります。さらに、「敷金なしは怖い」「敷金礼金ゼロは事故物件かもしれない」といった心配も耳にするため、ますます慎重になってしまうでしょう。
この記事では、敷金と礼金の基本的な役割から、なぜ敷金・礼金なしの物件が存在するのか、そのメリットとデメリット、そして契約前に必ず確認すべき注意点までを徹底解説します。仕組みを正しく理解すれば、「敷金礼金なし」が怪しい条件ではなく、むしろ賢い選択肢となることもあります。
この記事でわかること
- 敷金と礼金の基本的な役割
- 敷金礼金なし物件が存在する本当の理由
- 契約前に知っておくべきメリットとデメリット
- 後悔しないための物件選びの注意点
敷金礼金なしはなぜ怪しいと思われるのか?誤解と真実を解説
- 敷金礼金がないのはなぜか解説
- 敷金がない物件がある理由は何ですか?
- そもそも敷金礼金とは何か
- 敷金礼金なしは怪しいって本当?
- 敷金なしは怖いと感じる理由
- 敷金礼金なしは事故物件なの?
敷金礼金がないのはなぜか解説

賃貸物件の中に敷金や礼金が不要なものが存在するのには、はっきりとした理由があります。最大の理由は、大家さんや管理会社が空室期間を短くし、できるだけ早く新しい入居者を見つけたいと考えているためです。
日本では人口減少などを背景に、賃貸物件の供給数が需要を上回る供給過多の状態にあるエリアも少なくありません。このような状況では、物件の競争が激しくなり、他の物件との差別化を図る必要が出てきます。そこで、入居時の金銭的ハードルとなる初期費用を抑えることで、入居希望者の注目を集めようとしているのです。
また、家賃そのものを下げてしまうと、すでに入居している他の住民との公平性の問題や、一度下げた家賃を元に戻すことが難しいという事情があります。一方で、敷金や礼金は契約時に一度だけ発生する費用のため、これを無くすことは家賃収入の根本に大きな影響を与えずに実施できる、有効な空室対策となります。これらの理由から、特に入居者が見つかりにくい時期や、駅から少し距離があるといった条件の物件で、敷金・礼金なしという条件が設定されることが多くなります。
敷金がない物件がある理由は何ですか?

敷金が設定されていない物件には、主に2つの仕組みが関係していると考えられます。敷金が本来持っている「担保」としての役割を、別の方法でカバーしているのです。
一つ目の理由は、家賃保証会社の利用が契約の必須条件となっているケースです。家賃保証会社は、万が一入居者が家賃を滞納した場合に、大家さんに代わって家賃を立て替えてくれる会社です。大家さんから見れば、家賃滞納のリスクを保証会社が肩代わりしてくれるため、入居者から担保として敷金を預かる必要性が低くなります。特に近年の都市部の賃貸市場では、保証会社の利用は9割を超える物件で必須条件となっており、標準的な仕組みと言えます。ただし、入居者は保証会社を利用するために、別途保証料を支払う必要があります。
二つ目の理由としては、退去時にハウスクリーニング代や修繕費を実費で請求する契約になっている場合が挙げられます。敷金は本来、退去時の原状回復費用にも充てられます。敷金がない物件では、この費用を事前に預かる代わりに、退去のタイミングで部屋の状態に応じて必要な金額を請求する形を取っているのです。契約書に「退去時クリーニング代〇〇円」といった形で、あらかじめ金額が明記されていることも少なくありません。
そもそも敷金礼金とは何か

賃貸契約を結ぶ際に登場する敷金と礼金は、どちらも初期費用の一部ですが、その目的や性質は全く異なります。この違いを理解しておくことが、物件選びの重要なポイントになります。
敷金は、大家さんに対して預ける「担保」としてのお金です。主な役割は、家賃を滞納してしまった際の補填や、入居者の不注意で部屋に傷や汚れをつけてしまった場合の原状回復費用に充てることです。あくまで預けているお金なので、大きな問題なく退去すれば、原状回復にかかった費用などを差し引いた残額が返還されます。
一方、礼金は、物件を貸してくれる大家さんへの「謝礼」として支払うお金です。これは昔からの慣習に由来するもので、一度支払うと返還されることはありません。いわば、入居するためのお礼金と考えると分かりやすいでしょう。
両者の違いを以下の表にまとめました。
項目 | 敷金 | 礼金 |
目的 | 担保金(家賃滞納や原状回復費用への備え) | 謝礼金(大家さんへのお礼) |
返還 | 原則として、退去時に費用を差し引いて返還される | 返還されない |
相場 | 家賃の1~2ヶ月分 | 家賃の1~2ヶ月分 |
このように、敷金と礼金は根本的に意味合いが違う費用です。
敷金礼金なしは怪しいって本当?

「敷金礼金なし」と聞くと、何か裏があるのではないか、怪しい物件なのではないかと警戒する方もいるかもしれません。しかし、必ずしも怪しいわけではなく、前述の通り、大家さん側に入居者を早く見つけたいという明確な意図がある場合がほとんどです。
ただ、注意が必要な点もあります。なぜ敷金や礼金を不要にしてまで入居者を探しているのか、その背景を考えることが大切です。例えば、駅から遠い、築年数が古い、日当たりが良くないといった、一般的に人気が出にくい条件を抱えている物件の可能性があります。初期費用が安いというメリットだけに目を奪われず、なぜ安いのかという理由を冷静に考える姿勢が求められます。
また、初期費用が抑えられている分、他の名目で費用が請求されることもあります。例えば、短期解約違約金が設定されていたり、退去時のクリーニング代が相場より高く設定されていたりするケースです。そのため、契約内容を隅々まで確認し、トータルでかかる費用を把握することが、後悔しないための鍵となります。不動産会社の担当者に、敷金・礼金がない理由を直接尋ねてみるのも良い方法です。
敷金なしは怖いと感じる理由
敷金がない物件に対して「怖い」という感情を抱く主な理由は、退去時にどれくらいの費用を請求されるか分からず、予期せぬ高額な支払いを求められるのではないか、という不安から来ています。
通常、敷金を預けていれば、故意や過失による損傷の修繕費用はそこから支払われます。敷金がない場合、これらの費用は退去時に実費で請求されることになるため、部屋の使い方によっては大きな出費になる可能性があります。この「退去時の費用が不透明である」という点が、怖いと感じる最大の要因でしょう。
しかし、賃貸物件の原状回復には明確なルールが存在します。国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、普通に生活していて生じる壁紙の日焼けや家具の設置による床のへこみといった「経年劣化」や「通常損耗」については、大家さんの負担で修繕することになっています。入居者が負担するのは、タバコのヤニ汚れや、物を落としてできた床の傷など、故意・過失による損傷に限られます。
このルールを理解しておけば、不当に高額な請求をされるリスクは低いと言えます。ただし、このガイドラインには法的な拘束力がないため、実際には大家さんとの間で解釈の違いが生じ、原状回復費用をめぐるトラブルは少なくないのが実情です。退去時のトラブルを避けるためには、入居時に部屋の状態を写真で記録しておく、退去時の立ち会いに必ず同席して修繕箇所を一緒に確認するといった対策が有効です。
敷金礼金なしは事故物件なの?

敷金・礼金がゼロだからといって、その物件が事故物件である可能性は極めて低いです。事故物件とは、過去にその物件内で殺人、自殺、火災による死亡などがあった物件を指します。
宅地建物取引業法において、不動産会社はそういった事実を契約前に買主や借主に伝える「告知義務」を負っています。もし事故物件であることを知らされずに契約してしまった場合、後から契約の解除や損害賠償を請求することも可能です。そのため、不動産会社が意図的に事故物件であることを隠して紹介することは、非常にリスクが高い行為となります。
もっとも、いつまで、どのような内容を告知すべきかという点については、まだ法的に明確な線引きがされていない曖昧な部分も残っています。しかし、信頼できる不動産会社であれば、重要な情報としてきちんと説明してくれるはずです。敷金・礼金がない理由は、単に空室対策であることが大半です。
どうしても不安が拭えない場合は、臆することなく不動産会社の担当者に「この物件で過去に事件や事故がなかったか確認したいのですが」と直接質問してみましょう。誠実な担当者であれば、正直に答えてくれます。
敷金礼金なしはなぜ?後悔しないための注意点とデメリット
- 敷金礼金なしのデメリットとは
- 敷金なしだとどうなるのか解説
- 礼金なしはやめたほうがいいのか?
- 敷金礼金なしの初期費用はどうなる?
- 敷金と礼金はどっちがない方がいい?
- 結論:敷金 礼金 なし なぜかを理解しよう
敷金礼金なしのデメリットとは

初期費用を大幅に削減できる敷金・礼金なし物件ですが、契約する前に知っておくべきデメリットも存在します。これらの点を理解しないまま契約すると、後から「こんなはずではなかった」と後悔する可能性があります。
第一に、月々の家賃が周辺の同じような条件の物件と比較して、割高に設定されている場合があります。大家さんとしては、敷金や礼金で得られるはずだった収入を、毎月の家賃に少しずつ上乗せして回収しようと考えることがあるからです。短期的な居住であればお得に感じるかもしれませんが、長く住む場合は、結果的に総支払額が高くつくこともあり得ます。
第二に、退去時にクリーニング代や原状回復費用として、まとまった金額を請求される可能性があることです。前述の通り、敷金がないため、これらの費用は退去時に一括で支払う必要があります。引越しの際には何かと物入りになるため、この出費は大きな負担に感じられるかもしれません。
第三に、短期解約に関する違約金が設定されているケースが多い点です。大家さんは長く住んでもらうことを期待して初期費用を安くしているため、「1年未満の解約で家賃1ヶ月分」といったペナルティを設けていることがあります。急な転勤などの可能性がある方は、特に注意が必要です。
最後に、敷金・礼金なしという条件で探すと、選べる物件の数が限られてしまうこともデメリットと言えるでしょう。
敷金なしだとどうなるのか解説

敷金がない物件に入居した場合、最も影響が出るのは退去時です。敷金ありの物件との最大の違いは、原状回復費用の支払い方法にあります。
賃貸物件から退去する際には、入居者には「原状回復義務」があります。これは、借りていた部屋を入居前の状態に戻す義務のことですが、全ての傷や汚れを元通りにするという意味ではありません。あくまで、入居者の故意や過失、通常の使用方法とは言えないような使い方によって生じた損傷を修復する義務を指します。
敷金がある物件では、この原状回復にかかる費用は、まず預けてある敷金から差し引かれます。修繕費用が敷金の額より少なければ差額が返還され、もし超えてしまった場合は追加で請求されます。
一方で、敷金がない物件の場合は、この原状回復費用を全額、退去時に実費で支払うことになります。つまり、退去のタイミングで新たに費用を用意しなければなりません。部屋をきれいに使っていれば大きな負担にはなりませんが、例えば壁に大きな穴を開けてしまったり、床に深い傷をつけたりした場合には、数万円単位の請求が発生する可能性も考慮しておく必要があります。
礼金なしはやめたほうがいいのか?

結論から言うと、礼金なしの物件をあえて避ける必要は全くありません。むしろ、借り手にとってはメリットの大きい条件です。
礼金は、大家さんへの謝礼として支払うお金であり、敷金とは違って退去時に返還されることはありません。つまり、一度支払ったら戻ってこない費用です。そのため、この礼金がないということは、単純に初期費用の中から返ってこないお金を支払わなくて済む、ということになります。これによる借り手側のデメリットは基本的に存在しないと考えてよいでしょう。
大家さんが礼金を不要とするのは、先にも述べたように、入居のハードルを下げて早く空室を埋めたいという経営上の判断によるものです。借り手としては、この大家さんの方針の恩恵を受ける形になります。
ただし、一つだけ注意点を挙げるとすれば、礼金がない代わりに家賃が相場よりも少し高く設定されている可能性は考慮すべきです。物件を探す際には、礼金の有無だけでなく、同じエリアの類似物件と家賃を比較し、総支払額で本当にお得かどうかを判断する視点が大切になります。
敷金礼金なしの初期費用はどうなる?
敷金・礼金がゼロであっても、賃貸契約時の初期費用が完全にゼロになるわけではありません。他にも支払わなければならない費用がいくつか存在します。
一般的に、賃貸契約の初期費用には以下の項目が含まれます。
- 前家賃: 入居する月の家賃(月の途中で入居する場合は日割り計算)
- 共益費・管理費: 入居する月の費用
- 仲介手数料: 物件を紹介してくれた不動産会社に支払う手数料(家賃の0.5~1ヶ月分+消費税が上限)
- 火災保険料: 万が一の火災などに備える保険の加入費用(1.5万~2万円程度が目安)
- 家賃保証会社利用料: 保証会社を利用する場合の初回保証料(家賃の0.5~1ヶ月分、または数万円の定額)
- 鍵交換費用: 防犯のために前の入居者から鍵を交換する費用(1.5万~2.5万円程度が目安)
敷金・礼金がない場合、これらの費用が初期費用の総額となります。家賃8万円の物件を例に、敷金・礼金がある場合とない場合の初期費用を比較してみましょう。
費用項目 | 敷金・礼金あり(各1ヶ月) | 敷金・礼金なし |
敷金 | 80,000円 | 0円 |
礼金 | 80,000円 | 0円 |
前家賃 | 80,000円 | 80,000円 |
仲介手数料 | 88,000円 | 88,000円 |
火災保険料 | 20,000円 | 20,000円 |
保証会社利用料 | 40,000円 | 40,000円 |
鍵交換費用 | 22,000円 | 22,000円 |
合計 | 410,000円 | 250,000円 |
※上記の金額はあくまで一例です。初期費用は物件のある地域(都市部と地方)や、仲介する不動産会社によって大きく異なる場合があります。
このように、敷金・礼金がなくなるだけで、初期費用を大幅に抑えることが可能になります。
敷金と礼金はどっちがない方がいいですか?

もし、敷金か礼金のどちらか一方だけがゼロの物件を選ぶとしたら、借り手にとってメリットが大きいのは「礼金がない」物件です。
その理由は、それぞれの費用の性質にあります。礼金は大家さんへの謝礼金であり、一度支払うと二度と手元に戻ってくることはありません。一方で、敷金は担保として預けるお金であり、部屋をきれいに使っていれば、退去時にクリーニング代などを差し引いた上で返還される可能性があります。
つまり、礼金がない場合は、支払う必要のなかったお金が確実に手元に残ることになります。これに対して、敷金がない場合は、初期費用は安くなりますが、退去時に原状回復費用などを別途支払う必要があるため、最終的な支出がどちらがお得になるかは、退去時の部屋の状況次第となります。
もちろん、手元の資金に余裕がなく、とにかく初期費用を抑えたいという状況であれば、敷金がない物件も非常に魅力的です。しかし、純粋な費用の損得勘定で言えば、返還されない礼金がない方が、借り手にとっては確実なメリットがあると言えるでしょう。
結論:敷金 礼金 なし なぜかを理解しよう
この記事では、敷金・礼金なし物件の様々な側面について解説しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- 敷金礼金なしの最大の理由は大家さんの空室対策
- 早く入居者を見つけるため初期費用を安くしている
- 敷金なしの理由は保証会社利用や退去時清算が前提
- 敷金は担保金で退去時に返還の可能性がある
- 礼金は謝礼金で返還されることはない
- 敷金礼金なしが必ずしも怪しいわけではない
- 人気が出にくい条件の物件である可能性は考慮する
- 敷金なしが怖いのは退去時の費用が不透明に感じるため
- 原状回復には経年劣化は含まれないルールがある
- 敷金礼金なしと事故物件はほとんど関係ない
- デメリットは家賃割高や短期解約違約金の可能性
- 礼金なしは借り手にとって純粋なメリットが大きい
- 敷金礼金がなくても他の初期費用は必要になる
- 契約書の内容をよく確認することが最も大切
- 理由を理解すれば敷金礼金なし物件は賢い選択肢になる