
新しい部屋での暮らしに胸を膨らませていたのに、ふとエアコンをつけたらイヤなニオイが…。そんな経験はありませんか?いざ本格的なクリーニングを考えたとき、「この費用って自分が払うの?それとも大家さん?」と迷う方は少なくありません。
特に、吹き出し口に黒いカビがびっしり、あるいは入居時から掃除されていないような状態だったら、健康への影響も気になりますよね。「自分で掃除して大丈夫?」「専門業者に頼むと高いのでは?」そんな不安が次々と浮かんできます。さらに、入居前・入居中・退去時での扱い方や費用負担のルールも複雑で、トラブルにつながりやすいポイントです。
この記事では、賃貸エアコンクリーニングにまつわる費用負担の仕組みから、自分でできる掃除の範囲、大家さんや管理会社への相談方法まで、専門的な視点で徹底解説します。読んだあとには「結局、誰がどう負担すべきか」がスッキリ理解できるはずです。
この記事を読むことで、以下の点が明確になります。
- 賃貸エアコンクリーニングの基本的な費用負担のルール
- 自分で掃除できる範囲と業者に依頼すべきケースの見極め方
- 大家さんや管理会社とのスムーズな交渉方法
- 入居前から退去時までのエアコンに関する注意点
賃貸エアコンクリーニング入居中の費用と基本ルール
- 入居中のエアコンクリーニングは誰が負担?
- 賃貸エアコンのクリーニングは誰がする?
- 賃貸エアコンクリーニング費用の相場
- 勝手にクリーニングしてしまった場合の対処法
- 賃貸エアコンの掃除は自分でできる範囲
入居中のエアコンクリーニングは誰が負担?

賃貸物件のエアコンクリーニング費用を誰が負担するかは、法律と契約内容によって決まります。**原則として、エアコンは物件の「設備」であり、その維持管理の責任は貸主(大家さんや管理会社)にあります。**この点は、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも明確に示されています。
したがって、通常の生活で生じる経年劣化や、入居前から存在した汚れが原因でクリーニングが必要になった場合、その費用は貸主の修繕義務の範囲内となり、貸主が負担するのが基本です。
しかし、全てのケースで貸主が負担するわけではなく、例外として入居者の責任で費用を負担しなければならない場合もあります。
貸主(大家・管理会社)が負担するケース(原則)
- 入居直後の不具合: 入居してすぐに異臭やカビを発見した場合、入居前の清掃が不十分であった可能性が高く、貸主側の責任と見なされやすいです。
- 経年劣化や自然故障: 入居者が行うべき手入れ(後述)をしていたにもかかわらず、内部の汚れやカビが悪化した場合や、機器の寿命で不具合が生じた場合は、貸主の修繕義務の範囲内と考えられます。
借主(入居者)が負担するケース(例外)
- 善管注意義務違反: 入居者には「善良なる管理者の注意をもって」物件を使用する義務(善管注意義務)があります。フィルターの掃除を長期間怠った結果、カビが大量発生してしまった場合などは、この義務に違反したと判断され、費用を自己負担する可能性があります。
- 入居者の生活に起因する汚れ: 室内での喫煙によるヤニ汚れや、ペットの毛が原因でエアコンがひどく汚れた場合は、通常の使用を超えるものとして入居者の負担となることが多いです。
- 希望によるクリーニング: エアコンに明確な不具合はないものの、より快適な環境を求めて入居者が希望するクリーニングは、自己負担で行うのが基本です。
費用負担でトラブルを避けるためには、まず賃貸借契約書を確認し、それでも不明な場合は自己判断で業者を手配せず、必ず大家さんや管理会社に相談することが大切です。
賃貸エアコンのクリーニングは誰がする?

賃貸物件のエアコンクリーニングは、誰が主体となって行うかも重要なポイントです。これは費用の所在と同様に、清掃の範囲によって担当者が異なります。
日常的な手入れは「入居者」の役割
まず、エアコンの性能を維持し、清潔に保つための日常的な清掃は、入居者の義務に含まれます。これは、前述の通り「善管注意義務」に基づくものです。具体的には、以下のような手入れが該当します。
- フィルターの清掃: 2週間に1回程度、フィルターを取り外してホコリを掃除機で吸い取る、または水洗いする。
- 本体や吹き出し口の拭き掃除: 手の届く範囲のホコリや汚れを拭き取る。
これらの簡単なメンテナンスを怠ったことで生じた汚れや故障は、入居者の責任と見なされる可能性があるため、定期的に行うことが求められます。この範囲の清掃であれば、大家さんや管理会社への連絡は不要です。
専門的な内部洗浄は「貸主」が手配するのが基本
一方、エアコン内部の熱交換器や送風ファンなど、分解を伴う専門的なクリーニングは、物件の維持管理の一環として貸主(大家さんや管理会社)の責任範囲となります。入居者がこれらの清掃が必要だと感じた場合は、自分で業者を探す前に、まず貸主に状況を報告し、対応を相談するのが正しい手順です。
貸主側が提携している専門業者がいる場合や、物件全体のメンテナンス計画がある場合もあります。貸主の許可なく勝手に業者に依頼し、万が一エアコンが故障したり、壁や床を傷つけたりした場合は、修理費用を全額自己負担しなければならないリスクもあるため、注意が必要です。
したがって、手の届かない内部の汚れやカビ、異臭などが気になった際は、まず大家さんや管理会社へ連絡し、誰がどのようにクリーニングを手配するのかを確認することが、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。
賃貸エアコンクリーニング費用の相場
入居者負担でエアコンクリーニングを行うことになった場合、どのくらいの費用がかかるのかを把握しておくことは大切です。費用はエアコンの機種や業者の料金設定によって変動しますが、一般的な市場価格を知っておくことで、適切な業者選びが可能になります。
エアコンクリーニングの費用は、主に「エアコンの種類」と「付加機能の有無」によって大きく変わります。以下に、一般的な家庭用エアコンのクリーニング費用の相場をまとめました。
エアコンの種類 | 機能 | 料金相場の目安(1台あたり) |
壁掛けタイプ | お掃除機能なし | 8,000円 ~ 12,000円 |
お掃除機能付き | 14,000円 ~ 20,000円 | |
天井埋め込みタイプ | 1方向吹き出し | 18,000円 ~ 25,000円 |
4方向吹き出しなど | 28,000円 ~ 35,000円 | |
オプション | 室外機洗浄 | 3,000円 ~ 5,000円 |
抗菌・防カビコート | 2,000円 ~ 3,000円 |
お掃除機能付きエアコンが高額になる理由
お掃除機能付きエアコンは、フィルターのホコリを自動で清掃する機能が付いていますが、内部の熱交換器やファンまで掃除するわけではありません。むしろ、内部構造が複雑であるため、分解・組立に専門的な技術と時間が必要となり、クリーニング料金が通常タイプよりも高額に設定されています。
費用を抑えるポイント
- 閑散期を狙う: エアコンクリーニングの需要が高まる夏前(5~6月)や冬前(10~11月)は繁忙期となり、料金が高めに設定されたり、予約が取りにくくなったりします。春(3~4月)や秋(9~10月)の閑散期に依頼すると、割引キャンペーンが適用されることがあります。
- 複数台まとめて依頼する: 複数のエアコンを一度に依頼すると、「2台目以降割引」が適用される業者が多く、1台あたりの単価を抑えることが可能です。
- 複数の業者から見積もりを取る: 料金体系は業者によって様々です。少なくとも2~3社から見積もりを取り、料金だけでなく、作業内容や万が一の際の損害賠償保険の有無などを比較検討することが、納得のいく業者選びにつながります。
これらの相場やポイントを参考に、ご自身の状況に合ったクリーニング計画を立てることをお勧めします。
勝手にクリーニングしてしまった場合の対処法

良かれと思って、大家さんや管理会社に相談せずに専門業者にエアコンクリーニングを依頼してしまった場合、どうすればよいのでしょうか。このような状況では、トラブルを避けるために迅速かつ誠実な対応が求められます。
まず行うべきなのは、速やかに大家さんや管理会社に事後報告をすることです。黙っていると、後々の定期点検や退去時に発覚し、無断で設備に手を加えたとして契約違反を問われる可能性があります。報告が遅れるほど、心証が悪くなる恐れがあるため、気づいた時点ですぐに連絡を入れるのが賢明です。
報告の際に伝えるべき内容
連絡する際は、感情的にならず、以下の情報を客観的かつ正直に伝えましょう。
- クリーニングを実施した理由: 「カビのニオイがひどく、健康への影響が心配だったため」など、やむを得ずクリーニングを行った経緯を具体的に説明します。
- クリーニングを実施した日時: いつ作業が行われたのかを正確に伝えます。
- 依頼した業者の情報: 業者名、連絡先、担当者名などを伝えます。
- 作業内容と費用: どのようなクリーニングを行ったのか、そして費用はいくらかかったのかを明確に報告します。作業報告書や領収書があれば、そのコピーを提出するとより丁寧です。
- クリーニング後のエアコンの状態: クリーニング後にエアコンが正常に動作していることを伝えます。万が一、不具合が発生した場合は、正直にその状況も報告する必要があります。
費用負担についての注意点
原則として、事前の許可なく行ったクリーニングの費用を、後から貸主に請求することは非常に困難です。費用は自己負担になることを覚悟しておく必要があります。
最も避けたいのは、無断のクリーニングによってエアコンが故障してしまうケースです。この場合、修理費用は全額自己負担となるだけでなく、損害賠償を請求される可能性も否定できません。だからこそ、信頼できる専門業者を選び、作業に問題がなかったことを証明できる書類(作業報告書など)を保管しておくことが、万が一の際に自分を守る材料となります。
何よりも、賃貸物件の設備は借り物であるという意識を持ち、必ず事前に相談するという基本ルールを守ることが、不要なトラブルを避けるための最善策と言えます。
賃貸エアコンの掃除は自分でできる範囲

専門業者に依頼するほどではないけれど、エアコンの汚れが気になるという場合、自分でどこまで掃除して良いのか迷うことがあると思います。賃貸物件のエアコンであっても、入居者が行うべき日常的なメンテナンスの範囲内であれば、許可なく清掃することが可能です。しかし、その範囲を超えた行為はトラブルの原因となるため、境界線を正しく理解しておくことが大切です。
自分で掃除しても良い範囲
一般的に、特別な工具や専門知識を必要とせず、エアコンの取扱説明書に記載されているような日常的な手入れは、入居者が自由に行えます。
- エアコン本体外側の拭き掃除: 固く絞った雑巾などで、エアコンカバーのホコリを拭き取ります。
- フィルターの清掃: 前面パネルを開けてフィルターを取り外し、付着したホコリを掃除機で吸い取るか、水洗いします。水洗いした後は、カビの原因にならないよう、完全に乾かしてから元に戻すことが重要です。
- 吹き出し口(ルーバー)の清掃: 手が届く範囲の吹き出し口の汚れを、割り箸に布を巻き付けたものなどで優しく拭き取ります。
これらの清掃は、むしろ入居者の善管注意義務の一環として、定期的に行うことが推奨されます。
自分で掃除すべきではない範囲(注意点)
一方で、エアコンの内部構造に触れるような行為は、故障や感電のリスクがあるため、絶対に行うべきではありません。
- 内部の分解: カバーやフィルター以外の部品を取り外す行為は避けてください。特に、お掃除機能付きエアコンは構造が非常に複雑で、元に戻せなくなる可能性があります。
- 市販の洗浄スプレーの使用: 手軽に見えるエアコン洗浄スプレーですが、使い方を誤ると大きなリスクを伴います。実際に、**ダイキンやパナソニックといった主要なエアコンメーカーは、内部の電子部品の故障や火災のリスクがあるため、公式サイトなどで市販スプレーの使用を推奨しないと明確に表明しています。**洗浄液が電装部品にかかるとショートや火災の原因になりますし、すすぎが不十分だと内部で洗剤と汚れが固着し、かえってカビの温床となったり、悪臭を放ったりすることがあります。賃貸物件で洗浄スプレーが原因で故障した場合、高額な修理費用を請求される可能性が高いです。
結論として、自分でできるのはあくまで表面的な清掃までです。エアコンの奥からニオイがしたり、吹き出し口の奥にカビが見えたりする場合は、無理をせず大家さんや管理会社に相談し、プロの業者に任せるのが最も安全で確実な方法です。
状況別!賃貸エアコンクリーニング入居中のQ&A
- 賃貸エアコンがカビだらけだったら?
- 賃貸エアコンが掃除されてない時の対応
- 賃貸エアコンクリーニング入居前の確認点
- 退去時の賃貸エアコンクリーニングの扱い
- 賃貸のクリーニング代は入居時に支払う?
- まとめ:賃貸エアコンクリーニング入居中の総括
賃貸エアコンがカビだらけだったら?

入居中のエアコンの吹き出し口を覗き込んだ際、黒い点々としたカビを発見すると、非常に不快な気持ちになるものです。エアコン内部のカビは、不快なニオイの原因となるだけでなく、アレルギーや喘息といった健康被害を引き起こす可能性もあるため、決して放置してはいけません。
このような状況に気づいたら、まず行うべきは大家さんや管理会社への連絡です。自分で対処しようと市販のカビ取り剤を使ったり、無理に内部を掃除したりするのは、前述の通り故障のリスクが高く危険です。
大家・管理会社への連絡と伝え方
連絡する際は、ただ「カビが生えている」と伝えるだけでなく、状況を具体的に説明することがスムーズな解決につながります。
- 発見した時期: いつカビに気づいたのかを伝えます。特に入居後すぐであれば、貸主側の責任で対応してもらえる可能性が高まります。
- カビの状態: 「吹き出し口の奥に見える範囲に黒いカビがびっしり生えている」「エアコンを点けるとカビ臭い風が出てくる」など、状況を詳しく説明します。
- 証拠の提示: スマートフォンなどでカビの写真を撮影し、メールやメッセージで送付すると、状況が客観的に伝わりやすくなります。
- 要望を伝える: 「健康への影響が心配なため、専門業者による内部洗浄をお願いしたい」と、具体的な要望を伝えます。
通常の使用や、入居者側でできる定期的なフィルター掃除を行っていたにもかかわらずカビが発生した場合、その除去費用は貸主負担となるのが一般的です。貸主には、入居者が安全かつ快適に生活できる環境を提供する義務があるからです。
ただし、明らかにフィルター掃除を怠っていた場合や、結露を放置していたなど、入居者の使い方に問題があったと判断されると、費用の一部または全部を負担するよう求められることもあります。いずれにしても、カビを発見した際は速やかに相談し、貸主側の指示を仰ぐことが、問題をこじらせずに解決するための最善策です。
賃貸エアコンが掃除されてない時の対応

新生活への期待を胸に新しい部屋に入居したものの、エアコンをつけてみたらホコリっぽい風が出てきたり、フィルターが汚れていたりすると、がっかりしてしまいます。入居前に清掃されているはずの設備が汚れている場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
この対応は、汚れに気づいたタイミングが非常に重要になります。
入居直後に気づいた場合
鍵の受け渡し後、荷物を運び込む前に、必ずエアコンを含む全ての設備の動作確認を行うことが大切です。もしエアコンが掃除されていないことに気づいたら、すぐに行動を起こしましょう。
- 証拠写真を撮る: フィルターの汚れ、吹き出し口のホコリなど、掃除されていない箇所の写真を日付がわかるように撮影しておきます。これは、自分たちが汚したものではないという客観的な証拠になります。
- 速やかに管理会社や大家さんに連絡する: 入居後すぐに連絡することで、「入居前から汚れていた」という主張が通りやすくなります。電話だけでなく、メールなど記録に残る形で連絡するのが望ましいです。
- 清掃を要求する: 連絡の際には、専門業者によるクリーニングを要求します。入居直後の設備不良や清掃不備は、明らかに貸主側の準備不足であるため、その費用は貸主負担で対応してもらうのが当然の権利です。
入居から時間が経ってから気づいた場合
入居してから数ヶ月以上が経過した後に「掃除されていないのでは?」と感じた場合、話は少し複雑になります。貸主側から「入居後の使用による汚れではないか」と主張される可能性があるからです。
この場合でも、まずは諦めずに管理会社や大家さんに相談してみることが第一です。しかし、費用負担については交渉が必要になるかもしれません。日常的なフィルター掃除などをきちんと行っていたことを伝え、それでも内部の汚れがひどいという点を説明しましょう。
入居時のトラブルを避けるためにも、入居日には必ず設備の隅々までチェックし、少しでも気になる点があればその日のうちに写真付きで報告する、という習慣をつけることが自分自身を守る上で非常に有効です。
賃貸エアコンクリーニング入居前の確認点

エアコンに関するトラブルは、入居してから発生すると解決に手間がかかることが多いです。そのため、賃貸契約を結ぶ前や入居する前の段階で、いくつか確認しておくべき重要なポイントがあります。事前のチェックを徹底することで、入居後の快適な生活と不要なトラブルの回避につながります。
契約前の確認事項
物件の内見時や契約手続きの際に、以下の点を確認しておきましょう。
- エアコンが「設備」か「残置物」かを確認する:
- 設備: 物件のオーナーが所有・設置したもので、修理や交換、クリーニングの基本的な責任は貸主にあります。
- 残置物: 前の入居者が置いていったもので、貸主には修理やクリーニングの義務がありません。故障した場合、修理費用は自己負担となります。この区別は、賃貸借契約書や重要事項説明書の「設備」の欄に記載されているので、必ず目を通してください。
- エアコンの製造年式と状態をチェックする: 内見時には、エアコン本体に貼られているシールで製造年を確認しましょう。製造から10年以上経過している古いモデルは、性能が低く電気代が高くなる傾向があり、また故障のリスクも高まります。可能であれば、試運転させてもらい、異音や異臭、冷暖房の効き具合を確認するのが理想的です。
- 契約書の特約事項を読む: 契約書の中に「退去時のエアコンクリーニング費用は借主負担とする」といった特約が盛り込まれている場合があります。契約にサインする前に、費用負担に関する取り決めをしっかりと理解しておくことが、退去時のトラブルを防ぎます。
入居直後の確認事項
鍵を受け取ったら、荷物を運び入れる前に以下の最終チェックを行います。
- 本格的な動作確認: リモコンで電源を入れ、冷房・暖房・除湿・送風の各モードが正常に機能するかを確認します。
- 汚れの最終チェックと記録: フィルターや吹き出し口の汚れを再度確認し、もし汚れていれば、すぐにスマートフォンで写真を撮り、管理会社や大家さんに報告します。
これらの入居前のひと手間が、後々の「言った、言わない」という水掛け論を防ぎ、万が一の際に自分の立場を守るための重要な証拠となります。
退去時の賃貸エアコンクリーニングの扱い
賃貸物件から退去する際、原状回復義務の一環として、どこまで清掃すべきか悩む方は少なくありません。特にエアコンクリーニングについては、費用負担を巡って貸主とトラブルになるケースが見られます。
原則は「貸主負担」
結論から言うと、原則として退去時の専門的なエアコンクリーニング費用は貸主(大家さん)が負担します。 なぜなら、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」において、エアコン内部の洗浄のような専門的な清掃は、通常の使用によって生じる損耗(通常損耗)と見なされるからです。そして、この通常損耗の回復費用は、すでに毎月の家賃に含まれている、というのが基本的な考え方です。
つまり、入居者が日常的なフィルター掃除などを適切に行っていれば、退去時に専門業者によるクリーニング費用を追加で請求されることはありません。
例外的に「借主負担」となるケース
ただし、以下の特定の状況では、例外的に入居者が費用を負担しなければならない場合があります。
- 賃貸借契約書に有効な特約がある場合: 契約書に「退去時のハウスクリーニング代(エアコンクリーニング代を含む)は借主の負担とする」という趣旨の特約が明記されており、契約時にその内容について十分な説明を受け、借主が納得して合意している場合は、支払いの義務が生じます。
- 善管注意義務違反や通常の使用を超える汚れがある場合:
- 喫煙: 室内での喫煙により、エアコン内部にヤニがこびりつき、黄ばみや強いニオイが付着している場合。
- ペット: ペットの毛やニオイがエアコン内部に詰まっている場合。
- 手入れの懈怠: 日常的なフィルター掃除を全く行わず、ホコリが原因で故障に近い状態になっている場合。
これらの場合は通常損耗の範囲を超えると判断され、原状回復費用としてクリーニング代を請求されることがあります。退去時の無用な出費を避けるためにも、入居中に定期的なフィルター掃除を心がけることが最も効果的です。
賃貸のクリーニング代は入居時に支払うべきですか?
賃貸物件を契約する際、初期費用の中に「ハウスクリーニング代」や「室内消毒料」といった項目が含まれていることがあります。この費用は、エアコンクリーニング代と直接関係する場合もあれば、別の場合もありますが、入居時に支払うべきものなのでしょうか。
この費用の扱いについては、法律で明確に定められているわけではなく、賃貸借契約の内容に依存します。国土交通省のガイドラインでは、本来ハウスクリーニングは次の入居者のために貸主が行うべきものとされていますが、貸主と借主の双方が合意の上で「特約」として契約に盛り込むことは有効とされています。
入居時にクリーニング代を支払う契約
多くの賃貸物件では、慣習的に「退去時のクリーニング費用を入居者が負担する」という特約が設けられています。この費用を、退去時に敷金から差し引くのではなく、契約時に初期費用として前払いで徴収するケースがあります。この場合、契約書にその旨が明記されていれば、支払う義務が生じます。
入居時支払いのメリットとデメリット
- メリット: 退去時にクリーニング費用について心配する必要がなくなります。敷金が満額返還される可能性が高まるため、退去時の金銭的な見通しが立てやすくなります。
- デメリット: 入居前に支払うため、初期費用の負担が大きくなります。また、実際に退去する際の部屋の汚れ具合にかかわらず、一律の金額を支払うことになります。
注意すべき「二重請求」
最も注意すべきは、クリーニング代の「二重請求」です。例えば、入居時に「退去時クリーニング代」として支払ったにもかかわらず、退去時にも再度クリーニング代を請求されたり、敷金から差し引かれたりするケースです。これは不当な請求であり、支払う必要はありません。
このようなトラブルを避けるために、契約時には以下の点を確認することが不可欠です。
- 契約書にクリーニング代に関する特約があるか。
- その費用は「入居時」に支払うものか、「退去時」に支払うものか。
- 費用の内訳(エアコンクリーニングが含まれるかなど)はどうなっているか。
契約内容を十分に理解し、支払った費用の領収書は必ず保管しておくことが、自身の財産を守る上で重要になります。不明な点があれば、契約を締結する前に必ず不動産会社に説明を求めましょう。
まとめ:賃貸エアコンクリーニング入居中の総括
この記事では、賃貸物件で入居中にエアコンクリーニングを行う際の様々な疑問について解説しました。最後に、重要なポイントを改めてまとめます。
- エアコンは物件の設備であり、維持管理の基本責任は貸主にある
- 通常の経年劣化による内部クリーニングは貸主負担が原則
- 入居者の故意や過失、善管注意義務違反による汚れは入居者負担
- 日常的なフィルター掃除は入居者の義務
- 専門的な内部洗浄は自己判断せず、まず大家や管理会社に相談する
- 無断で業者に依頼すると、費用負担や故障時にトラブルとなるリスクがある
- クリーニング費用の相場はエアコンの種類によって異なり、8,000円から20,000円程度が目安
- 市販の洗浄スプレーはメーカー非推奨であり、故障や火災のリスクがある
- 入居直後の汚れや不具合は、すぐに写真付きで報告することが重要
- 契約前にエアコンが「設備」か「残置物」かを確認する
- 契約書にあるクリーニングに関する特約は必ず確認する
- 退去時のクリーニングは原則貸主負担だが、特約やひどい汚れがある場合は入居者負担となる
- 入居時にクリーニング代を支払う契約もあるが、二重請求には注意が必要
- トラブルを避ける鍵は、契約内容の理解と大家・管理会社への「事前相談」
- 疑問や不明な点があれば、必ず契約前に確認し、やり取りは記録に残す