敷金とクリーニング代を両方請求された!?その理由と回避する方法とは

敷金とクリーニング代を両方請求された!?その理由と回避する方法とは

賃貸契約を進める中で、「敷金」と「クリーニング代」の両方を請求され、戸惑いを感じていませんか。賃貸のクリーニング代が入居時と退去時の両方で必要なのか、また初期費用でクリーニング代がいらない物件との違いは何なのか、疑問は尽きないものです。

さらに、敷金とクリーニング代の相場や、契約書に記載されている特約の有効性、入居時のクリーニング代は拒否できるのかといった具体的な悩みも生じます。加えて、賃貸のクリーニング代を先払いした場合の返金の有無や、「クリーニング費用は敷金から差し引かれますか?」あるいは「敷金とクリーニング代は相殺できますか?」といった精算に関するよくある質問も、契約前にすっきり解消しておきたいポイントです。

この記事では、これらの複雑に絡み合う疑問を一つひとつ丁寧に解き明かし、あなたが納得して新しい生活の扉を開けるよう、専門的な知識を分かりやすく解説していきます。


この記事を読むことで、以下の点が明確になります。

  • 敷金とクリーニング代が両方請求される仕組みと法的根拠
  • クリーニング代の費用相場と支払いタイミング
  • 敷金からクリーニング代が引かれる条件と相殺の可否
  • 不当な請求を避け、トラブルを未然に防ぐための具体的な対策
目次

敷金とクリーニング代、両方請求される理由と相場を徹底解説

賃貸契約において、敷金とクリーニング代が両方請求されることには明確な理由が存在します。このセクションでは、なぜ両方の費用が必要になるのか、その背景にあるルールや費用の相場、そして両者の根本的な違いについて掘り下げていきます。

  • 敷金とクリーニング代、両方請求されるのはなぜ?
  • 賃貸クリーニング代は入居時と退去時の両方払うべき?
  • 敷金とクリーニング代の相場はいくらが目安?
  • そもそも敷金とクリーニング代の違いとは
  • 敷金クリーニング代の特約が契約を左右する

敷金とクリーニング代、両方請求されるのはなぜ?

敷金とクリーニング代、両方請求されるのはなぜ?

結論から言うと、敷金とクリーニング代の両方が請求される主な理由は、賃貸借契約書に「特約」としてその旨が記載され、双方が合意しているためです。

本来、次の入居者を迎えるための専門的な清掃(ハウスクリーニング)にかかる費用は、物件の維持管理の観点から、貸主(大家さん)が負担するのが原則とされています。これは、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にも示されている考え方です。(参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)

しかし、日本の法律では「契約自由の原則」が認められています。このため、貸主と借主が合意の上であれば、ガイドラインとは異なる内容を「特約」として契約に盛り込むことが可能です。多くの賃貸物件では、「退去時のハウスクリーニング費用は借主の負担とする」という特約が設けられており、入居者がこれに署名・捺印することで、支払い義務が生じる仕組みになっています。

したがって、敷金(家賃滞納や故意・過失による損耗の担保)とは別に、クリーニング代の支払いを求められるのは、契約上の取り決めに基づいている、というのがその理由です。

賃貸クリーニング代は入居時と退去時の両方払うべき?

賃貸クリーニング代は入居時と退去時の両方払うべき?

通常の賃貸契約においては、クリーニング代は入居時か退去時のどちらか1回のみ支払うのが基本です。もし入居時と退去時の両方で請求された場合、それは二重請求にあたる可能性が非常に高いため、注意が必要です。

そもそもクリーニングは、退去した部屋を次の入居者が快適に使える状態にするために行われます。そのため、一つの賃貸期間(入居から退去まで)に対して、専門業者によるクリーニングは通常1回で十分です。ただし、例外もあります。例えば、入居中にペットによる強い臭いや喫煙によるヤニ汚れなど、借主の責任で特別な清掃が必要になった場合は、退去時のクリーニング代とは別に、中途での清掃費用を請求される可能性はあります。

こうした特別な事情がないにもかかわらず二重請求された場合は、契約書や入居時の支払い明細(領収書など)を提示し、すでに支払い済みであることを主張する必要があります。無用なトラブルを避けるためにも、契約関連の書類は、退去が完了し敷金の精算が終わるまで大切に保管しておくことが大切です。

敷金とクリーニング代の相場はいくらが目安?

敷金とクリーニング代の相場はいくらが目安?

敷金とクリーニング代の費用相場を把握しておくことは、不当に高い費用を請求されていないか判断する上で非常に役立ちます。

まず敷金ですが、これは担保として預けるお金であり、一般的には「家賃の1ヶ月分」が最も多い設定です。物件によっては2ヶ月分であったり、逆に「敷金ゼロ」という物件も存在します。

一方、クリーニング代は、部屋の広さや間取りによって変動する実費です。ここで提示する相場は、あくまで全国的な平均値です。東京都心部などの都市圏や、新築・築浅の物件、グレードの高い設備を持つ物件などでは、これよりも高額に設定される傾向がある点にご留意ください。

間取りクリーニング代の相場(全国平均)
ワンルーム・1K20,000円 ~ 40,000円
1DK・1LDK30,000円 ~ 60,000円
2LDK・3DK50,000円 ~ 80,000円
3LDK以上70,000円 ~

この相場から著しくかけ離れた高額なクリーニング代が設定されている場合は、契約前に不動産会社にその根拠を確認してみることをお勧めします。

そもそも敷金とクリーニング代の違いとは

敷金とクリーニング代は、どちらも賃貸契約の際に登場する費用ですが、その性質は根本的に異なります。この違いを理解することが、費用の仕組みを把握する第一歩となります。

敷金の性質:返還される可能性のある「預け金」

敷金は、万が一の事態に備えて大家さんに預けておく「担保」のお金です。主な役割は以下の2つです。

  1. 家賃を滞納した場合の補填
  2. 入居者の故意・過失によって生じた部屋の損傷(例:壁に穴を開けた、床に大きな傷をつけたなど)を修繕するための費用(原状回復費用)

あくまで預けているお金なので、家賃滞納がなく、通常の使用を超える大きな損傷がなければ、退去時に修繕費などを差し引いた残額が返還されます。

クリーニング代の性質:返還されない「支払い金」

クリーニング代は、退去後に専門業者が行う室内清掃サービスの対価として支払う費用です。これは、次の入居者を迎えるための準備であり、借主負担とする特約に基づいて支払われます。

敷金とは異なり、サービスへの対価として支払うお金であるため、一度支払ったクリーニング代が返金されることは基本的にありません。この「返ってくるお金」と「返ってこないお金」という点が、両者の最も大きな違いと考えると分かりやすいでしょう。

敷金クリーニング代の特約が契約を左右する

敷金クリーニング代の特約が契約を左右する

前述の通り、クリーニング代を借主が負担するかどうかは、賃貸借契約書に記載された「特約」の内容によって決まります。この特約が、費用負担に関する全てのルールの根源となると言っても過言ではありません。

国土交通省のガイドラインでは、普通に生活していて生じる汚れや傷(通常損耗・経年劣化)の修繕費用は、家賃に含まれるものとして貸主が負担すべきとされています。しかし、このガイドラインは法律のような強制力を持つものではなく、あくまで「指針」です。

そのため、契約書に「通常損耗の補修費用やハウスクリーニング代は、借主の負担とする」といった特約が明記され、借主がその内容を理解した上で合意・契約した場合、その特約が有効と判断されることがほとんどです。ただし、どんな特約でも認められるわけではありません。消費者契約法第10条では、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害する条項は無効とすると定められています。具体的には、借主の権利を不当に制限したり義務を加重したりする特約で、著しく不利益なものは無効となる可能性があります。しかし、単に相場より少し高いというだけで直ちに無効になるわけではなく、その判断は個別のケースに応じて慎重に行われます。(参考:消費者庁「消費者契約法」)

したがって、契約にサインする前には、特約事項の欄を隅々まで読み、少しでも疑問に思う点があれば、必ず不動産会社に質問し、内容を明確に理解しておくことが、後のトラブルを防ぐ上で最も重要な鍵となります。

敷金とクリーニング代両方の支払いで損しないための知識と対策

敷金とクリーニング代の仕組みを理解した上で、次に知っておきたいのが、実際に支払う場面で損をしないための具体的な知識と対策です。ここでは、費用の支払いを拒否できる可能性や、トラブルを未然に防ぐ方法、そして敷金との精算関係について詳しく解説します。

  • 初期費用でクリーニング代がいらないケースとは
  • 入居時のクリーニング代は拒否できるのか?
  • 敷金とクリーニング代両方のトラブルを防ぐ方法
  • クリーニング費用は敷金から差し引かれる?相殺は可能?
  • 敷金とクリーニング代両方の請求トラブルを避けるための契約確認ポイント

初期費用でクリーニング代がいらないケースとは

物件情報を見ていると、「初期費用のクリーニング代不要」と記載されていることがあります。これは一見するとお得に感じられますが、「不要」という言葉を鵜呑みにせず、事実上は何らかの形で費用を負担しているケースがほとんどだと認識することが重要です。

クリーニング代がいらないとされる主なケースは、以下の2つのパターンが考えられます。

  1. 退去時に費用を支払う契約になっている 入居時の初期費用に含まれていないだけで、退去時に敷金から精算されるか、別途請求される契約になっている場合です。これは支払いのタイミングが後ろにずれているだけで、最終的な負担額は変わりません。
  2. 他の費用に上乗せされている クリーニング代という名目ではないものの、その費用が礼金や家賃、または「安心サポート」といった他のサービス料に実質的に含まれている可能性があります。特に、周辺の類似物件と比較して家賃が不自然に高い場合は、このケースを疑う必要があります。

「クリーニング代不要」という魅力的な言葉の裏には、こうしたカラクリが隠れている可能性を常に念頭に置き、敷金・礼金の有無や家賃設定、その他の費用を含めた契約全体の総額で、本当にお得かどうかを判断することが大切です。

入居時のクリーニング代は拒否できるのか?

入居時のクリーニング代は拒否できるのか?

結論から言うと、入居時に提示されたクリーニング代の支払いを一方的に拒否することは、事実上不可能です。

その理由は、貸主は契約条件に合意しない入居者に対して、契約を締結しない権利を持っているからです。つまり、クリーニング代の支払いを拒否するということは、その物件への入居自体を諦めることとほぼ同義になります。実務上、借主が特定の契約条件に同意しなければ、契約は成立しません。

交渉の可能性が皆無というわけではありませんが、その余地は極めて限定的です。例えば、提示されたクリーニング代が全国平均の相場よりも著しく高額である場合や、特約の記載内容が非常に曖昧である場合には、その点を指摘して減額交渉を試みる価値はあります。

もし交渉を行う場合は、感情的にならず、「ガイドラインではこうなっていますが、この金額の根拠を教えていただけますか」といったように、冷静かつ論理的に質問する姿勢が望ましいでしょう。

敷金とクリーニング代両方のトラブルを防ぐ方法

敷金とクリーニング代両方のトラブルを防ぐ方法

敷金とクリーニング代に関するトラブルは、賃貸で最も多い問題の一つです。しかし、いくつかのポイントを事前に押さえておくだけで、その多くは未然に防ぐことが可能です。

契約内容を隅々まで確認する

最も基本的な対策は、契約書にサインする前に、内容を徹底的に確認することです。特に、費用負担に関する「特約」の項目は一言一句見逃さないようにしましょう。不明な用語や納得できない条件があれば、その場で不動産会社の担当者に説明を求め、完全に理解してから契約を進めることが不可欠です。

入居時に部屋の状態を記録する

入居したらすぐに、部屋の隅々までチェックし、すでにある傷や汚れを写真や動画で記録しておきましょう。日付の入る形で撮影しておくと、より客観的な証拠となります。これを怠ると、退去時に元からあった傷まで自分の責任として修繕費を請求されるリスクがあります。

退去時の立ち会いを必ず行う

退去時には、必ず貸主や管理会社の担当者と一緒に部屋の状態を確認する「立ち会い」を行いましょう。その場で、入居時に撮影した写真と照らし合わせながら、どこが原状回復の対象となるのかを双方で確認します。これにより、後から一方的に高額な請求をされるといった事態を防ぐことができます。

トラブル時の相談先を把握しておく

万が一、話し合いで解決しないトラブルに発展してしまった場合に備え、相談できる窓口を知っておくと安心です。各都道府県の消費生活センターや、(公財)日本賃貸住宅管理協会の相談窓口など、中立な立場でアドバイスをくれる専門機関が存在します。

クリーニング費用は敷金から差し引かれる?相殺は可能?

クリーニング費用は敷金から差し引かれる?相殺は可能?

クリーニング費用が敷金から差し引かれるか、つまり両者が相殺されるかという点は、精算時に非常に関心の高いポイントです。

結論としては、契約書に「退去時クリーニング代は借主負担とし、敷金から充当する」といった旨の記載があれば、クリーニング費用は敷金から差し引かれて精算されるのが一般的です。これは、敷金が持つ「原状回復費用の担保」という役割に基づいています。

退去時の精算の流れは、おおむね以下のようになります。

  1. 退去の立ち会い後、原状回復にかかる費用の総額(クリーニング代+借主負担の修繕費)が確定します。
  2. 大家さんまたは管理会社が、預かっている敷金から、その費用総額を差し引きます。
  3. 敷金が費用総額を上回っていれば、差額が借主に返還されます。
  4. 逆に、敷金だけでは費用を賄いきれない場合(例:大きな損傷がある、敷金ゼロ物件など)は、不足分が別途請求されます。

このように、クリーニング代は敷金と相殺されるのが通例ですが、あくまで契約内容次第です。契約によっては、敷金とは別に現金で支払うよう定められているケースもあるため、精算方法についても契約時に確認しておくとよいでしょう。

敷金とクリーニング代両方の請求トラブルを避けるための契約確認ポイント

この記事で解説してきた内容を踏まえ、敷金とクリーニング代に関するトラブルを未然に防ぐために、契約時に最低限確認すべき重要なポイントを以下にまとめます。新生活を気持ちよくスタートさせるために、ぜひ役立ててください。

  • 敷金とクリーニング代は性質が全く異なる費用だと理解する
  • クリーニング代は特約があれば借主負担になるのが一般的
  • 通常の契約ではクリーニング代の支払いは1回が基本
  • 入居時と退去時の両方での請求は二重請求の可能性を疑う
  • クリーニング代の相場はあくまで目安であり地域や物件で変動する
  • 提示された金額が相場から著しく高くないか確認する
  • 契約書に具体的なクリーニング代の金額が明記されているか見る
  • 「実費精算」の場合は上限金額の目安を確認する
  • 「クリーニング代不要」物件は費用がゼロとは限らないと心得る
  • 本来は貸主負担である通常損耗まで借主負担になっていないか特約を確認する
  • 敷金からクリーニング代が差し引かれる(相殺される)のか精算方法を確認する
  • 入居時には必ず部屋の傷や汚れを写真で記録しておく
  • 退去時の立ち会いには必ず同席し、その場で修繕箇所を確認する
  • 契約書や領収書などの関連書類は精算が完了するまで保管する
  • 不明点や疑問点は署名・捺印する前に必ず質問し解消する
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